仙台市におけるインフルエンザ発生状況

(Vol.26 p 151-152)

インフルエンザ患者発生状況

2004/05シーズンの仙台市におけるインフルエンザ患者報告数は、2004年第50週より増加し始め、第9週にピークに達した後、減少に転じた。ピークの到来は過去5年間で最も遅く、また、ピーク時の患者報告数は 2,468人と、過去5年間で最高を記録した(図1)。

インフルエンザウイルス分離状況

市内の5カ所の医療機関(病原体定点)で採取された咽頭ぬぐい液をMDCK細胞に接種してCPEを観察した。CPEが確認された培養液について、0.75%モルモット赤血球を用いてHA価を測定後、国立感染症研究所より分与された2004/05シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を行い、同定した。4月末までにAH1型が24株、AH3型が80株、B型が125株(すべて山形系統株)分離されている。B型インフルエンザウイルスの分離数は2月初旬以降著しく増加し、今シーズンの流行の中心を占めていたものと思われる。また、AH1型が分離されたのは2001/02シーズン以来3シーズンぶりである。

AH3型インフルエンザウイルスのワクチン株に対するHI価

過去5シーズン(2000/01〜2004/05シーズン)に分離されたAH3型インフルエンザウイルスの保存株(各シーズン4株)について、デンカ生研製ワクチン株抗血清A/Panama/2007/99およびA/Wyoming/3/2003を用いたHI試験を行った。A/Panama/2007/99株抗血清(ホモHI価1,280)に対しては、2000/01〜2001/02シーズンの分離株のHI価は640〜1,280であったのに対し、2002/03シーズン以降の分離株は20〜320と著しく低下した。一方、A/Wyoming/3/2003株抗血清(ホモHI価320)に対しては、各シーズンの分離株は、160〜640のHI価を有しており、大きな変動は認められなかった。

供試株のHA領域における遺伝子解析結果

供試株からRNAを抽出し、RT-PCRによりHA遺伝子を増幅後、PCRプロダクトを用いたダイレクトシーケンスによりHA領域の一部の塩基配列(921bp)を決定し、分子系統樹解析を行った。今回供試した20株は2002/03シーズンを境に大きく2つの群にわかれた。2000/01〜2001/02シーズンの分離株はA/Panama/2007/99株と99%以上の相同性を有していたが、2002/03シーズン以降の分離株はA/Wyoming/3/2003株との相同性の方が高かった(99.4〜98.2%、表1)。

2004/05シーズンの分離株は、1株が2005/06シーズンワクチン株としてWHOが推奨しているA/California/7/2004類似株であったのに対し、3株は同株と921bp中18〜19bp異なる別のクラスターを形成していた(図2)。また、アミノ酸配列においても307カ所中12カ所で置換が認められた。この3株はA/Wyoming/3/2003株に対してもほぼ同様の解析結果を示した。

今シーズン仙台市内で分離されたAH3型インフルエンザウイルスのHA遺伝子を解析した結果、現在のワクチン株A/Wyoming/3/2003から大きく分枝した株が認められたことから、今後の動向を注意深く監視していく必要があると考えられる。

仙台市衛生研究所・微生物課ウイルス係
勝見正道 橋本 渉 関根雅夫 小黒美舎子 熊谷正憲 吉田菊喜

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る