2005年2月末〜3月にかけて県北部の1保育園において、園児・家族・職員に及ぶ腸管出血性大腸菌O26:H11による集団感染が発生したので概要を報告する。
3月3日(木)に医療機関から1歳の保育園男児1名のO26、VT1産生株による腸管出血性大腸菌感染症の発生届が保健所に提出された。この届出に対して、保健所が保育園児の接触者調査を行ったところ、他の園児からもO26:H11(VT1産生)株が検出されたため、全保育園児と職員の検査が行われた。その結果、表1に示したように初発の園児1名を含む103名中24名、職員20名中3名から同菌が検出された。さらに、菌陽性となった園児の家族内の調査も行われ、38名中16名からも同菌が検出された。陽性となった24名の園児のうち有症者は16名、症状が認められなかった者が8名で発症率は67%であった。一方、職員および家族16名に発症者はなく、発症率に有意差が認められた(p<0.01)。また、初発患者自宅の調理器具、玩具など9件のふきとり検査を行ったが同菌は検出されなかった。一連の検査は3月17日までに終了した。
園児における発生状況を表2に示した。陽性者24名のうち、0歳児クラス3名、1歳児クラス9名、2歳児クラス8名、4歳児クラス2名および6歳児クラス2名であった。0歳児、1歳児および2歳児クラスでの陽性率が高く、特に初発患者のクラスで82%に達した。この3クラスの担任職員とも陽性者であったことに加え、他のクラスに兄弟姉妹がいたことなどから、感染が広まったと推測された。
菌陽性者より検出された同菌株のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行った結果の一部を図1に示した。Dice法による類似度は、38名中36名は90%以上であったが、2名(レーン7、11)は80〜90%にとどまった。しかし、類似度の差異からは園児、職員、家族などに一定の傾向は見出せなかった。また、過去6年間に宮城県内で分離されたO26:H11(VT1産生)株とは一致するものはなかった。なお、過日このレーン11については、国立感染症研究所・細菌第一部による解析の結果、この集団感染とは全く異なるパターンであることが確認された。
宮城県保健環境センター
田村広子 三品道子 菅原直子 佐藤由美 畠山 敬 谷津壽郎 秋山和夫