2〜3月における手足口病の地域流行−川崎市

(Vol.26 p 150-150)

手足口病は、例年夏季に流行するウイルス性疾患であるが、2005年2〜3月にかけて、川崎市幸区(総面積:10.09km2)において小流行がみられたので、その概要について報告する。

本市の感染症発生動向調査では、同区において第7週(2/14-2/20)から患者が増加し始め、第12週(3/21-3/27)には定点あたりの患者数が3.25人でピークとなり、第14週(4/4-4/10)に終息するまでの約2カ月の間に総患者数は41名となった。他の区域ではわずかながら患者の報告が認められただけであった。年齢層は0歳〜7歳までの小児で、3歳が12名(29%)、2歳が9名(22%)と多くみられた。このことから保育園における集団発生も疑われたが、同区の4定点医療機関すべてにおいて患者の報告がみられ、患者は区内に散在していることから、流行施設を特定することはできなかった。

当所には3月25日に7歳の男児(No.243)、29日に2歳の女児(No.244)の咽頭ぬぐい液が搬入された。検体をVeroおよびCaCo-2細胞に接種したところ、両細胞で明瞭なCPEが認められた。増殖したウイルスについて、国立感染症研究所から分与されたコクサッキーウイルスA16型(CA16)とエンテロウイルス71型の抗血清による中和試験を行ったが、同定することはできなかった。そこで、篠原ら(感染症学雑誌 73:749-757, 1999)のプライマーを用いたRT-PCR法を行い、シーケンサーにより塩基配列を決定し、構造遺伝子のVP4(207bp)領域についてBLAST検索を行った。その結果、両検体ともCA16と同定された。分離された2株は207塩基中10塩基の違いがみられ、VP4における相同性は95.2%であった(図1)。

今回の手足口病の流行は、調査の結果、区内に限定された地域流行であった。遺伝子解析の結果、流行に関与していたウイルスは複数認められた。このことから、今夏も手足口病の流行が予測され、今後とも発生動向を監視していく必要があると考えられる。

川崎市衛生研究所 清水英明 奥山恵子 平位芳江
川崎市健康福祉局保健医療部疾病対策課 小林和仁 大塚吾郎

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