アジアにおけるインフルエンザA/H5N1型の疫学状況は明らかに変化したが、2005年5月のWHO のマニラの会議では、その意味するものにつき議論がなされた。以下に観察された変化を述べる。
・南部ベトナム(2)と比べ、北部ベトナム(8)でのクラスター数が増えている。
・各クラスターにおける最初の症例と最後の症例の間の期間が、以前の報告と比べて長くなっている。
・不顕性感染が検出されている。
・症例の年齢範囲が以前の報告と比べ大きくなっている。
・死亡症例の数が以前の報告と比べ少なくなっている。
ヒトからヒトへの感染伝播は証明されていないが、疾患パターンはその可能性に合致するように変化していると考えられる。予備的なウイルス学的調査では、感染地域からのインフルエンザA/H5N1型の遺伝子の相異が報告されており、このことは、抗原性の多様性が増大しつつあることを示唆すると思われる。インフルエンザA/H5N1型は進化しており、パンデミックを引き起こす可能性は大きくなりつつあると思われるが、疫学的およびウイルス学的知見の意味するところはまだ十分には明らかでない。これらの知見によって生ずる懸念に関して、WHOは、すべての国においてパンデミックのための事前対応活動を完成させること、家禽で鳥インフルエンザが発生している国では、そのコントロールをより急いで行うことを勧めている。
(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 20, 2005)