細菌性赤痢:その疾患負荷、疫学、治療について

(Vol.26 p 182-183)

細菌性赤痢は多くの発展途上国で蔓延しており、公衆衛生上の大きな問題である。現在までのところ、フルオロキノロン系抗菌薬のシプロフロキサシン、ノルフロキサシンは赤痢菌に有効であるが、最近、これらの抗菌薬に耐性の志賀赤痢菌type 1(以下Sd1と略)による流行が報告されている。今後、流行を探知し、薬剤感受性パターンを決定し、介入の準備をするために、疫学的サーベイランスシステムを改善する必要がある。

細菌性赤痢の疾患負荷:アジアでは年間9,100万人が細菌性赤痢に罹患し、そのうち約41万人が死亡していると推定されている。また、新たな問題としてアジアや中央アフリカでの経験から、ナリジクス酸を集中的に使用すると、Sd1は数年で耐性を発現することが明らかになっている。

細菌性赤痢の疫学と伝播:バングラデシュ・ダッカでのデータでは、最も多く分離されているのはフレクスナー赤痢菌である。また、Sd1の大部分がナリジクス酸に耐性である。現在、原則的に人→人伝播であり、予防対策として、手指消毒と衛生的な上下水道管理などが有効である。赤痢菌ワクチンの開発も進められているが、その抗原性の複雑さなどが障害となっている。

細菌性赤痢の検査技術:赤痢菌検出のための検体の取り扱いは糞便、環境、食品検体で異なるが、患者検体からの細菌検査は、検体採取から2〜4時間以内に行うのが望まれる。保存の必要がある場合には、輸送培地に入れて4℃に保つ必要がある。環境検体や食品検体であれば、細菌数が少ない場合には増菌培養が必要となる。

細菌性赤痢の治療:エンピリック抗菌薬治療を行うには、当該地域で流行している赤痢菌の薬剤感受性パターンを知る必要がある。多くの国ではテトラサイクリン、アンピシリン、コ・トリモキサゾール、ナリジクス酸はもはや有効とは言えない。細菌性赤痢治療の第一選択をシプロフロキサシンにすべきである、との指針が出された。

結論:WHOのガイドラインは改訂中であるが、今回は手指洗浄をターゲットとした“介入”により力点をおき、特にSd1感染患者の場合、抗菌薬の使用についてはフルオロキノロン系抗菌薬を第一選択として修正する予定である。

(WHO, WER, 80, No.11, 94-99, 2005)

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