ポーランドにおける性感染症のサーベイランスは、第二次世界大戦後の梅毒・淋疾の流行を受けて1946年に始まったが、症例の報告・登録、性行為の相手への通知と治療、妊婦の梅毒のスクリーニングなどが行われていた。2001年に新しい感染症法が成立し、現在の届出疾患は、梅毒、淋疾、非淋菌性尿道炎、性器ヘルペス、陰部疣贅、HIV感染症であるが、HIV感染症のサーベイランスは別個に行われている。
梅毒:近年、報告からみた梅毒の発生は減少している。2003年には982例が登録され、罹患率(人口10万人当たり2.02)は2002年より16%減少している。妊娠中あるいは出産時に診断された女性が55例みられた(2002年は72例)。2003年には先天性梅毒の診断が13例みられた。梅毒報告例の減少は、梅毒検査を受けた人の減少によるものと思われる。2003年には血液検体941,932件の検査が行われたが、これは2002年、1999年、1990年と比べ、それぞれ19%、65%、89%減少している。
他の性感染症:2003年には淋疾の報告が670例あり、2002年より11%増加している。2003年には、報告からみた他の性感染症の発生は減少している。非淋菌性尿道炎は13%、陰部疣贅は10%、性器ヘルペスは27%減少している。
考察:2003年もいくつかの気がかりな傾向が続いている。まず、梅毒の検査の実施数が1990年代以降、劇的に減っている。次に、梅毒あるいは淋疾患者の接触者のうち、すぐに治療を受けた者の割合が低い状況が続いている。また、検査を受ける率が大幅に低下しているにもかかわらず、妊娠中に梅毒と診断された女性の数が減っていないことも懸念される。先天性梅毒の率は1990年代の初めに増加し、2003年にも高い水準にある。
2001年までは性感染症の治療と検査は無料であったが、2001年からは保険に加入している人であっても自己負担がある。ポーランドにおいて性感染症をコントールするためには、無料の治療が不可欠である。性感染症の流行が起きた場合、治療にかかるコストの方が予防を有効に行なうコストよりも高くなるであろう。
(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 20, 2005)