5月中旬に見られたインフルエンザ集団発生例−大阪府

(Vol.26 p 180-181)

2005(平成17)年5月中旬に、和泉保健所管内の児童養護施設においてインフルエンザ様疾患の集団発生が認められ、患児うがい液よりAH3型インフルエンザウイルスを分離したので報告する。

大阪府においては、今冬は2005年第4週から定点当たりのインフルエンザ患者報告数が増加し、第8、9週にピークを迎えた。その後、第10週より患者数は漸減し、第17週には定点当たりの患者報告数は1以下となった。分離ウイルスはB型が主流で、分離のピークは患者報告と一致していた。一方AH3型については大きな流行の形態をとらず、小さな分離のピークを第8、9週に認めたが、散発的な発生は第22週まで持続した(2005年6月15日現在)。

当該施設では初発の4月29日〜5月12日まで発熱を主訴とした新規患児が1〜2名/日で発生し、13日以降は6〜8名/日と急増した。14日までに入所児52名中28名、スタッフは21名中6名が罹患した。翌15日に休日診療所を受診した1名が迅速診断キットによりインフルエンザA型と診断された。その翌日にも医療機関を受診した11名のうち8名がキットによりインフルエンザA型と診断されたため、インフルエンザの集団発生として届けられ、当所に15検体が搬入された。検体は、MDCK細胞に接種され、初代培養で5検体、2代培養で1検体に細胞変性効果(CPE)を認めた。分離ウイルスは感染研から配布されたインフルエンザ検査キットを用いてHIテストを実施した(0.7%ヒトO型血球使用)。その結果、このウイルスはAH1型およびB型抗血清に<10、A/Panama/2007/99(H3N2)に対しては≦20(ホモ価2,560)を示したが、A/Wyoming/03/03(H3N2)に対しては640〜2,560(ホモ価2,560)を示したので、今回分離されたウイルスは、AH3型インフルエンザウイルスと同定した。なお、入所児は全員、今シーズンのインフルエンザワクチンの接種を2回受けていた。

大阪府では、昨(2004)年非流行期である9月下旬〜10月上旬にかけてもインフルエンザによる学級閉鎖を経験している。今シーズンのように明瞭なピークをもたずにAH3型が流行し、散発的な集団発生の原因となることは珍しい。府内定点よりAH3型インフルエンザウイルスの分離は続いており、今後の非流行期においてもインフルエンザの動向には注意する必要があると思われる。

大阪府立公衆衛生研究所・感染症部
森川佐依子 宮川広実 加瀬哲男 奥野良信

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