欧州各国当局が行う動物由来感染症の疫学や対策のため、欧州全土にわたる動物由来感染症に関する疫学情報が毎年編集されている。今回、2003年の結果が報告された。2003年には、対象動物種を増やした動物由来感染症病原体を監視するEC指令 [2003/99/EC]と、サルモネラや他の食品媒介動物由来感染症の病原体に関するEC規則[(EC) No 2160/2003] が発効した。
サルモネラ症・カンピロバクター症:EUでは再び、最も多い動物由来感染症となり、各々約135,000症例が報告された。サルモネラ症はここ数年減少傾向で、2002年より7%減少したが、食鳥でS . Enteritidisが増加した国もあり、食品では鳥肉に最も多く見つかった。カンピロバクター症は長期間増加傾向であったが、2002年には5%、2003年には9%減少していた。
エルシニア症:ヒト症例9,399例が報告され、食品では主に豚肉に認められた。
ブルセラ症:EU加盟13カ国とノルウェーで、ヒト症例1,094例が報告された。2002年(2,386症例)より明らかに減少し、特にギリシャ、ポルトガル、スペインで顕著であった。公式にブルセラ症がないとされる国でのヒト症例は、国外での感染または汚染輸入食品を介した感染と推測される。
Vero毒素産生性大腸菌(VTEC):ヒト症例は減少したが、EUとノルウェーでVTEC感染症または溶血性尿毒症症候群(HUS)が2,607例報告された。いくつかの国では、ウシとヒトの感染に明らかな関連がみられた。HUSと確定された203例のうち、45例はO157以外の血清型であった。
リステリア症:EUとノルウェーで1,048症例が報告された。
旋毛虫症:EUとノルウェーでヒト症例が56例報告された。他にラトビア、リトアニアでヒト症例がそれぞれ22、19例みられ、動物症例も多少報告された。近年の発生は主に輸入肉によるものであり、ブタまたは野生動物の感染が9カ国で報告された。
狂犬病:動物の狂犬病が5カ国で報告されたが、ドイツでは減少した。ヒト症例はなかった。
ウシ結核:ECの共同資金による根絶計画がスペイン、イタリア、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルで実施されたが、感染ウシ群の割合は、ポルトガルの0.08%からアイルランドの6.9%であった。公式に結核がないとされるベルギー、フランス、ドイツで、新たな感染ウシ群が確認された。ウシ型結核菌によるヒト結核は、10の加盟国で57例報告された。
(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 21, 2005)