ウシ型結核菌は本来ウシの感染症である。感染ウシの低温殺菌されていない牛乳を飲めばヒトに感染しうるが、先進国ではまれである。このレポートは、ニューヨーク(NY)市で感染が確認された35例について調査中の結果を要約したものである。感染源として、メキシコ産の生チーズが疑われている。ヒト→ヒト感染は証明されていない。
結核サーベイランス:NY市では2001年1月1日以降、患者から分離された結核菌に対し、ルーチンにスポリゴタイピング検査が実施されている。この迅速遺伝子型検査は本来、疫学モニタリングを主目的としているが、ウシ型とヒト型結核菌を区別することもできる。2001〜2004年にNY市では4,524例の結核が報告され、うち3,417例(76%)が培養で確定診断された。このうち3,123例(91%)にスポリゴタイピング検査がなされた結果、ウシ型結核菌が35例みつかった。
35例中12例(34%)は15歳未満の小児(年齢中央値5歳)で、5例は5歳未満であった。成人23例の年齢は16〜76歳(中央値27歳)であった。35例中20例(57%)はメキシコ、11例は米国、2例はドミニカ共和国生まれであり、他にグァテマラとガイアナ生まれが1例ずつであった。5歳未満の症例はすべて肺外結核(リンパ節結核3例、腹膜炎2例)を伴っていた。この5例はすべて米国生まれであるが、親はメキシコ生まれであった。米国外への渡航歴はなく、他の結核患者との疫学的関連もなかった。
35例中26例が入院治療を要した。病変部位は肺外結核21例(60%)、肺結核9例(26%)、両者の合併5例(14%)であった。肺病変を伴った14例中8例(57%)が喀痰塗抹検査陽性であった。HIV検査が25例に実施され、7例が陽性。死亡例は15カ月の男児1例で、下痢と発熱で発症し、結核性腹膜炎を合併していた。
35株の薬剤感受性結果では、49%がピラジナミド単独耐性、40%がピラジナミドおよびストレプトマイシン耐性で、イソニアジド耐性菌もみられた。耐性を示さない菌は3%であった。
検査:スポリゴタイピング、IS6110を用いたRFLP、MIRU、PGRS法による遺伝子型別ではいくつかの型に分けられたが、13株は同一の遺伝子型を示した。
疫学調査:聞き取り調査を行った23例(66%)のうち、19例(83%)(5歳未満5症例中の4症例の親を含む)にメキシコ産チーズの喫食歴があった。それらのチーズはメキシコ製品急送便業者や旅行者など、複数ルートで入手したものであった。18例(78%)では、喫食した乳製品が低温殺菌されていたかどうかが不明であった。現在、メキシコ産チーズでNY市内で入手されたサンプルを用い、ウシ型結核菌の検査が行われている。
(CDC, MMWR, 54, No.24, 605-608, 2005)