小学校におけるノロウイルスGI の集団発生事例−島根県

(Vol.26 p 223-223)

県東部のA小学校で6月上旬にノロウイルスgenogroup I(GI )を原因とする集団胃腸炎が発生したのでその概要を報告する。

2005年6月7日、医療機関から嘔気を呈するA小学校(児童数300名余)の児童を診察したところ、同じ小学校で嘔気、嘔吐、腹痛を呈する児童が他にもいるとの情報を得たとの連絡が管轄保健所にあった。保健所の調査で、同小学校では6月5日に全校行事と学年別の懇親会(保護者、児童、教員が参加)があり、患者が6年生に集中し、ほとんどが7日に発症していたことから、当初、懇親会の食事を介した食中毒が疑われた。その後の調査で6年生には4日に発症した者、および懇親会の料理を食べずに発症した者が複数いること、1年生にも同様の症状の者が複数いることが判明した。本事例の患者を6月4日以降に腹痛、下痢、嘔気、嘔吐のいずれかを呈した者と定義すると、患者数は6年生33名、1年生9名、保護者・兄弟13名、計55名であった。日時別の発症状況をに示す。

患者23名の糞便、6年生の懇親会で提供された食品、料理を提供した施設のふきとりについて実施した細菌検査の結果、2名から血清型の異なるCampylobacter jejuni が分離された。一方、23名中16名についてリアルタイムPCR法あるいはRT-PCR法によるノロウイルスの検出を行った結果、10名(6年生9名、1年生1名)がGI 陽性となった。G1SKF/Rの増幅産物のダイレクトシークエンシングを行った結果、GI.3型(DSV type)に属し、シークエンスが可能であった9株(6月4日発症者および1年生を含む)は240baseが100%一致した。

以上の結果から、保健所はノロウイルスGI による感染症と判断し、学校および家庭での二次感染防止を指導した。

ノロウイルスGI による施設での集団感染事例は本県では初めてであるが、5月以降の大阪府の事例でもGI.3型の検出が報告されており(IASR 26: 179-180, 2005参照)、ウイルスの動向が注目される。なお、県内の5、6月の発生動向調査に伴う感染性胃腸炎患者からはノロウイルスGI は検出されていない。

島根県保健環境科学研究所 飯塚節子 波多由紀子
松江保健所        福井公夫

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