EP95は地方衛生研究所と国立感染症研究所が1995年に共同で作製したエンテロウイルス同定用プール抗血清である。これまで各ブロックを通じ地方衛生研究所へ供給を行ってきた。一方、エンテロウイルスは抗原変異が起こることがあるため標準株で作製した抗血清では難中和性を示すこともある。そのためEP95のフォローアップとして2001年には分離株を中心にしたエンテロウイルス抗血清を共同作製し、EP2001として供給を行ってきた。
さて、2003〜2005年にはエコーウイルス(E)6、E18、E30の分離が感染症サーベイランスで比較的多く報告されたが、検査の際にEP95プール抗血清でE6、E18について同定作業が混乱する事例が見られたので報告する。
1)EP95プール抗血清のうち、EP1(E3、E4、E5、E6、E7抗血清を含む)とEP5(E6、E14、E18、E24、E25抗血清を含む)で中和された場合、E6として同定する。2003〜2005年シーズンにRD-18Sにて分離されたE6分離株は攻撃ウイルス濃度が高いとEP1とEP5で中和されない場合が見られた。市販品あるいは感染研から分与した標準株(D'Amori)抗血清20unitではCPEはほぼ抑制される。プライム株(Cox-1)抗血清20unitでは完全にCPEは抑制された。
2)同時期流行していたE18分離株についても、EP95で同定困難であった。感染研分与のE18標準抗血清20unitでCPEは抑制され、市販品でも中和可能であった。しかし市販品のE18抗血清はE6についてもCPE抑制してしまう傾向が見られた。なお市販のE6抗血清はE18に対しCPE抑制は見られない。
3)すなわちEP95で中和困難なケースにおいて、確定のため市販のE18抗血清を単独で用いるとE6を誤ってE18と同定してしまう可能性があった。
対策としては次の3点が挙げられる。
1)RD細胞にてE18とE6はCPEの出現パターン、形態に明瞭な差がある。E18はRD細胞でCPEがゆっくりと進行し、HEp-2にはあまり感受性を示さない。一方E6のCPEはRD、HEp-2とも急速に進行し、ウイルス力価は高い。こうした感受性および形態学的な性状の違いは同定の際に役立つ。
2)EP95あるいは市販のプール抗血清で中和が不完全なため、確定のため単味の抗血清を用いる場合、CPEの形態的な違いを勘案して複数の抗血清を用いた方が判定の精度が上がる。なお感染研ウイルス第2部にて単味抗血清の分与を行っているので、判定困難な場合は相談されたい。
3)遺伝子解析法を併用すると判定には役立つが、ルーチン検査では形態的な違いと単味抗血清の組み合わせで比較的容易に判定可能である。
広島県保健環境センター 高尾信一
滋賀県立衛生科学センター 吉田智子
愛媛県立衛生環境研究所 豊嶋千俊
国立感染症研究所・ウイルス第二部 吉田 弘 清水博之