現在、イングランド南東部のある”急性期病院”でのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile )集団発生事例の調査が行われている。この事例でのC. difficile 分離株のうち、59%がPCRリボタイプO27型であったが、これは英国では珍しい型であり、カナダおよび米国での集団発生に関連していたものである。
C. difficile は”弱い”患者、しばしば抗菌薬投与を受けている高齢者に感染し、下痢から腸の重症炎症に至る症状を引き起こし、死に至らしめることもある。この病院でのC. difficile 毒素陽性例は、2003年4月〜2004年3月の期間に85例であったが、続く12カ月では209例に増加した。2003年11月に集団発生と正式発表され、感染者の隔離あるいはコホーティング、環境の消毒、手指衛生の強化、PPE 使用、広域スペクトル抗菌薬の使用制限などの対策が取られた。
これらの英国の菌株はさらなる検査が行われており、カナダと米国において集団発生を起こした株と比較がなされつつある。また、O27型菌株のいくつかは検査のため、米国CDC にも送られている。パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)とREP-PCRによるサブタイプ解析の予備的結果からは、今回のO27型菌株のいくつかは北米の菌株のいくつかと同一ではないにしても、非常に類似していた。
北米での調査では、O27型菌株のいくつかでは毒素産生を調節するtcdC 遺伝子の欠失により、toxin A、toxin Bの産生がそれぞれ16、20倍に増加していることが分かった。他の菌株が主に定常期に毒素を遊離するのに対し、この菌株は主に対数増殖期に毒素を遊離している。この菌株はtoxin A、toxin B、さらに(第3の毒素と言われる)binary toxinを産生するトキシノタイプIIIに属し、ある種の新しいフルオロキノロン系薬に耐性であることが分かった。英国のO27型菌株のすべては、試験管内で毒素高度産生性であり、同じtcdC 遺伝子の欠失を示していた。
イングランドやウェールズの医療従事者に対しては、C. difficile 感染で重症度が高まり、致死率が上昇し、ある種のフルオロキノロン系薬使用に伴って症例が増加することなどに注意するよう伝えられた。
(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 26, 2005)