2005年のエンテロウイルス分離状況−愛媛県

(Vol.26 p 238-239)

2005年の愛媛県におけるエンテロウイルス(EV)感染症は、全般的に穏やかな流行で推移している。ヘルパンギーナ患者報告数は例年より約2カ月早い第11週頃から増加傾向を示し、緩やかな増加で、第23週(6月第2週)の定点当たり3.6人/週をピークとして減少傾向にある。手足口病(HFMD)は発生頻度は低く、期間中では1.3人/週が最多であった。今回は2005年のEVを中心にウイルス分離状況について報告する。

供試した検体は、2005年1月〜7月に感染症発生動向調査の一環として病原体定点等医療機関から搬入された咽頭ぬぐい液等計567件で、ウイルス分離はFL、RD-18S、Vero細胞を用い、33℃で2週間回転培養して行った。また、必要に応じて哺乳マウスも併用した。同定は感染研分与および自家製抗血清を用いて中和試験を行った。

月別のウイルス分離状況を表1に、診断名別の分離状況を表2に示した。EVは計29株分離され、そのうちコクサッキーウイルス(C)A6が2月〜6月に計21株と、最も多く分離された。次いでCA16が5株、その他エコーウイルス3型が1株、6型が2株分離された。EV以外には、インフルエンザウイルスA香港型が6月まで例年より長い期間分離され、B型も2月〜4月にかけて多く分離された他、アデノウイルスが5、6月に多く分離された。

ヘルパンギーナから分離されたEVはほとんどがCA6であるため、今年の同疾患はCA6を主原因とする流行であったと考えられた。なお、CA6はヘルパンギーナの他、熱性疾患、上・下気道炎等、多様な疾患から分離されており、さらにHFMDからも4株分離され、うち1株は水疱内容物から分離されたことから、CA6が今シーズンのHFMDの一因でもあったことが示唆された。HFMDからは23件中5件のCA16が分離されており、今年のHFMDはCA16とCA6が主原因であったと推測された。

なお、CA6はRD-18S細胞にのみ感受性を示したが、細胞培養での分離は比較的困難で、CPEの発現までに約10日〜2週間を要した。また、今回分離した21株のうち3株は哺乳マウスのみで分離され、哺乳マウスがCA6に高い感受性を持つことが示唆された。

愛媛県立衛生環境研究所 豊嶋千俊 山下育孝 近藤玲子 大瀬戸光明 井上博雄

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る