2004/05シーズン、沖縄県のインフルエンザの流行は3月中旬にピークとなり、一時は終息に向かったが、6月中旬頃から患者が再び急増し、2005年7月13日にはインフルエンザ注意報が発令された。国内では夏場の注意報発令は過去に例がなく、例年とは異なる状況であったので概要を報告する。
患者発生状況:2004/05シーズン、沖縄県のインフルエンザウイルスの流行は、2005年の第11週(3月14〜24日)に患者数4,039人、定点当たり69.64人でピークとなった後減少し、第16週(4月18〜24日)には定点当たり9.6人と、一時は終息に向かうと思われた(図1)。しかし、第25週(6月20〜26日)から患者が再び増加し始め、第27週(7月4〜10日)には患者数652人、定点当たり11.24人と注意報発令基準(定点当たり10人)を上回り、第28週(7月11〜17日)に患者数827人、定点当たり14.26人と、2回目のピークとなった(図1)。第30週(7月25〜31日)には患者数489人、定点当たり8.43人で注意報発令基準を下回り終息に向かっている。患者報告数を年齢別でみると、0〜9歳と30〜39歳で多いのが特徴であった(図2)。この夏季の流行で県内の小中高7校11クラスが学級閉鎖となった。
ウイルス分離状況:今シーズンは、2005年1月22日に定点医療機関で採取された咽頭ぬぐい液からAH3型が初めて分離され、8月中旬末までにAH3型31株、B型11株、計42株が分離された。1月は、AH3型のみが分離されたが、2〜3月はAH3型およびB型が分離され、4〜8月は再びAH3型のみの分離であった(図3)。国立感染症研究所より分与された2004/05シーズン抗原解析用抗体キットを用いたHI試験(0.75%モルモット赤血球を使用)では、AH3型分離株は、抗A/Wyoming/03/2003(ホモ価1,280)に対してHI価160〜1,280、B型分離株は抗B/Johannesburg/5/99(ホモ価1,280)に対してHI価640〜1,280を示した。
ウイルス抗原解析:6月中旬〜7月下旬のAH3型分離株のうち、HI価160〜320と低い交差反応性を示した2株については、国立感染症研究所においてHI試験でさらに詳細な抗原解析が行われた。その結果、2005/06シーズンワクチン株に対する抗A/New York/55/2004フェレット感染血清に対して、ホモ価より2〜8倍低い反応性を示したことから、抗原変異が起こっている可能性が示唆された。
これまで、国内では夏季にAH3型が流行した例はないが、東南アジアにおけるインフルエンザ流行は、例年6〜8月の雨期に流行のピークがあるといわれ、2000〜2002年のタイの報告では1〜2月と6〜8月にピークがあり(IASR 25: 292-293, 2004)、今回の流行パターンと類似している。
今後、地球温暖化に伴う気象変動により、本県のインフルエンザ流行形態も東南アジア型に移行することも考えられ、夏場の流行に注目し、監視を強化する必要がある。
沖縄県衛生環境研究所
平良勝也 仁平 稔 糸数清正 久高 潤 大野 惇
沖縄県感染症情報センター 賀数保明 下地實夫
沖縄県健康増進課 新垣美智子 田盛広三