宮城県における手足口病の地域流行

(Vol.26 p 239-240)

宮城県の感染症発生動向調査における定点当たりの手足口病患者報告数は、2005年第25週より増加し始め、第28週に4.34人とピークを迎えたが、第30週には2.57人に減少し、県全体では小流行の状況であった。

しかし、県北部に位置する気仙沼保健所管内の患者報告数が第18週から増え始め、第20週には5.33人と警報開始基準値を超えた。その後も患者報告数は増加し、第28週には53.00人と過去10年間における同管内の患者報告数と比較すると最大であり、一地域のみの大流行となった(図1)。

週別・年齢別の患者報告数は、表1のとおりである。一般的に、手足口病は2歳以下の幼児が患者の半数を占めると言われているが、今回は3歳〜5歳の患者が約54%と半数を占め、流行の中心であった。また、流行は学童年齢へ広がっていく傾向がみられた。

定点医療機関において、第21〜23週に咽頭ぬぐい液が合計15件採取され、当センターで検体を3種類の細胞(RD-18S、Vero、CaCo-2)に接種しウイルス分離を行った。その結果、継代3代目(約1カ月経過後)で、15件中12件にCaCo-2細胞で細胞変性効果(CPE)が見られた。その後、CaCo-2細胞でCPEが確認された12件中8件は、Vero細胞でも極めて弱いCPEが出現した。同時に、乳飲みマウスでの分離を試みたがすべて陰性であった。

CPE陽性細胞培養液上清と国立感染症研究所から分与された抗血清による中和試験を実施したが、A群コクサッキーウイルス16型(CA16)に難中和性を示した(継続検査中)。そこで、上清からRNAを抽出し、(1)エンテロウイルスのVP4-VP2部分領域におけるプライマー(EVP4、OL68-1)と、(2)CA16検出用の山崎らのプライマー(感染症学雑誌 75: 909-915, 2001)を用いたRT-PCRを行った結果、両領域ともに特異的な増幅産物が確認された。さらに、(1)で得られた増幅産物をダイレクトシーケンス法で塩基配列を決定し、BLASTによる検索を行った結果、12検体すべてがCA16にアミノ酸レベルで98〜100%の相同性を示した。

以上の結果から、今回の手足口病の地域流行は、CA16が原因と考えられた。第30週現在、気仙沼保健所管内における定点あたりの患者報告数は28.00人と、警報継続中であり、地域流行は終息していないため、今後も動向を注意深く監視する必要があると思われる。

宮城県保健環境センター・微生物部
菊地奈穂子 庄司美加 山木紀彦 後藤郁男 植木 洋 沖村容子 秋山和夫
宮城県気仙沼保健所・健康対策班

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