仙台市における2005年6〜7月のAH1型インフルエンザウイルスの分離

(Vol.26 p 245-245)

2005(平成17)年6月〜7月にかけて、仙台市内においてインフルエンザ様疾患の患者由来の臨床検体からAH1型インフルエンザウイルスを分離したので報告する。

7月15、16日に医療機関を受診し、インフルエンザと診断され、当仙台市衛生研究所に送られた4名の患者の咽頭ぬぐい液のうちの2つからAH1型インフルエンザウイルスが分離された。ウイルスが分離された患者は4歳と7歳で、7月14日〜15日に発症し、主症状は発熱(38〜40℃)、上気道炎であった。なお、4歳児の姉も一週間前に発熱しており、7歳児と同じ小学校の生徒であった。

MDCK細胞に検体(咽頭ぬぐい液)を接種したところ、培養4日目で2検体に明瞭な細胞変性効果(CPE)が認められたため、培養上清について感染研から分与された2004/05シーズン用インフルエンザ検査キットを用いてHI試験(0.75%モルモット赤血球使用)を実施したところ、抗A/Wyoming/03/2003(ホモ価 640)、抗B/Johannesburg/5/99(同 1,280)、抗B/Brisbane/32/2002(同 320)に対してはHI価<10を示したが、抗A/Moscow/13/98(同 640)に対して40、抗A/New Caledonia/20/99(同 320)に対して320のHI価を示し、AH1型ウイルスの分離が同定された。さらに培養上清からRNAを抽出し、川上ら1)が報告したNA亜型同定用のプライマーでRT-PCRを行ったところ、N1のプライマーでのみ遺伝子が増幅されたことから、NAはN1亜型であり、A/H1N1型と同定された。

このほか仙台市内では、仙台医療センター・ウイルスセンターでも、6月23日にA病院に肺炎で入院した小児(9カ月・女)、および7月11日にB病院をインフルエンザ様疾患で受診した4歳男児から、ともにA/New Caledonia/20/99(ホモ価 320)に対して320のHI価を示すAH1型インフルエンザウイルスが分離されている。

仙台市内では、2001/02シーズン以来3シーズンぶりにAH1型インフルエンザが分離されたが、分離数は増えず、当研究所の成績では4月中旬以降は分離されていなかった(表1)。しかし、感染症発生動向調査情報によれば、シーズン終了後も継続的にインフルエンザ患者の発生が報告されており(図1)、また、今回AH1型インフルエンザウイルスが分離されたことから、今後もインフルエンザの発生動向に注意する必要があると思われる。

 文 献
1)IASR 23 (8): 198-199, 2002

仙台市衛生研究所
勝見正道 吉田麻耶 関根雅夫 小黒美舎子 熊谷正憲 吉田菊喜
池田クリニック  綿谷かおる
独立行政法人国立病院機構仙台医療センター・臨床研究部ウイルスセンター
西村秀一
東北労災病院小児科 高柳玲子

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