2005年春以降、ベルギー、ドイツ、フランスで時期を同じくして、ハンタウイルス感染症の異常な増加が見られている。2005年1月1日〜6月15日の期間にベルギーで120例、フランスで115例が報告された。またドイツでは、同年1月1日〜6月30日の期間に258例の確定例が報告されているが、今年は例年より患者発生の立ち上がりが早いのが特徴である。なお、ベルギーでは2003年には122例、2004年には47例が報告されており、フランスでは2003年に128例、2004年に55例、ドイツでは1月1日〜6月30日の期間の集計で2003年に72例、2004年に64例が報告されている。
2005年に報告された症例の男女比は、ベルギーで3.0、フランスで3.4、ドイツで2.5で、ほとんどが男性の症例であった。年齢の中間値は3カ国の総計で41歳で、国別ではベルギーで42.9歳(11〜82歳)、フランスで42.8歳(16〜83歳)、ドイツで40.9歳(5〜75歳)であった。
ベルギー:患者数の報告が多い順に、ルクセンブルク州(34名、2.0/10万人)、リエージュ州(27名、2.6/10万人)、ナミュール州(25名、5.5/10万人)となっている。
フランス:症例の多くはベルギー国境に近い北部のアルデンヌ(40名、13.8/10万人)とエーヌ(18名、6.9/10万人)から報告されている。また、スイス国境に近いジュラ山脈部(13名、5.2/10万人)でも流行している。
ドイツ:症例の報告が最多であるのはノルトライン=ヴェストファーレンであり(92名、0.5/10万人)、次いでニーダーザクセン(51名、0.6/10万人)、バーデン=ヴュルテンベルク(46名、0.4/10万人)、ヘッセン(23名、0.4/10万人)、バイエルン(23名、0.2/10万人)などである。
なお、2004年の秋以降、ベルギー、フランス、ドイツの森林地帯と農耕地域では齧歯類、特にハタネズミが増え続けている。
ハンタウイルス感染症を防ぐには、齧歯類を住居に近づけないようにすることが必要であり、食物をむき出しにすることなどは齧歯類を寄せ付ける可能性があるので、避けるべきである。また、空き家を清掃する際にはほこりを除く前に、土壌や物の表面などを消毒薬でスプレーすべきであり、流行地域の住民に対しては、本症の危険因子や症状などについての情報を提供すべきである。
(Eurosurveillance Weekly 10, Issue 29,2005)