千葉県におけるノロウイルスGII/4の遺伝子変異

(Vol.26 p 327-327)

ノロウイルス(NV)は、2つのgenogroup(GI、GII)に大別され、それらはさらに33の遺伝子型に分類されるが、患者から検出されるNVの多くはGIIである1)。なかでも、Bristol virusに代表されるGII/4遺伝子型は、世界的な流行を引き起こし、医療・社会福祉施設における集団発生で検出される主要な遺伝子型として知られている。近年GII/4の変異株の検出と変異株による胃腸炎事例の増加がEUの研究グループにより報告された2,3)。本報では、千葉県で検出されたGII/4遺伝子型関連事例における検出株の遺伝子変化について報告する。

千葉県では1999年秋〜2005年春までの間、GII/4はすべてのシーズンで検出されて、最近では学校・病院・介護福祉施設等での集団胃腸炎事例でも多く検出されている。この間に検出されたGII/4株のキャプシド蛋白をコードするORF2を解析した結果、標準株を含め5つのサブタイプが認められた1)(GII/4a〜GII/4e;図1)。そのうち、2002/03シーズン以降に検出された2つのグループ(GII/4d、/4e)では高度可変領域(P2領域)に1アミノ酸の挿入が認められ、P2領域を中心としてアミノ酸変異の蓄積が認められ、抗原性に影響を与えている可能性も示唆された1)。

EUの研究グループによって報告されたRNAポリメラーゼ(RdRp)領域での変異について解析を実施したところ、2002年以前に検出された株と異なり、2002〜2004シーズンの株では2002年型と呼ばれる "AATCTG"の配列を持つ株が認められ、さらに2004/05シーズンでは2004年型といわれる特徴をもった株も検出され、EUの研究グループによる報告と一致した。しかしながら千葉県では、2004年型以外にSaitamaU1株4)に近い別の特徴をもった株も検出されており、複数のRdRpタイプをもつGII/4株が混在していた。このシーズンのRdRp領域の主流株は2004年型ではなく、SaitamaU1型であった。

本解析で、GII/4遺伝子型に年次的な遺伝子レベルの変化が生じていることが明らかになった。しかしながらGII/4関連事例の増加と遺伝子変化との間の関係や抗原性の変化は不明であり、今後さらなる解析が必要と思われる。

 文 献
1) Okada et al., J Clin Microbiol 43: 4391-4401, 2005
2) Lopman et al., Lancet 363: 682-688, 2004
3) Kroneman et al., Eurosurveillance Weekly 2004 (52):23/12/2004 [ http://www.eurosurveillance.org/ew/2004/041223.asp#1]
4) Katayama et al., Virology 299: 225-239, 2002

千葉県衛生研究所
岡田峰幸 小川知子 窪谷弘子 吉住秀隆 篠崎邦子

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