小学校で発生したサポウイルスによる集団胃腸炎2事例、ヒトC群ロタウイルスによる集団胃腸炎1事例−神奈川県

(Vol.26 p 339-339)

2005年5月に神奈川県域(横浜、川崎、横須賀、相模原市を除く)の異なる地域の小学校でサポウイルス(SV)を原因とする集団胃腸炎2事例、ヒトC群ロタウイルス(CHRV)による集団胃腸炎1事例が発生したのでその概要を報告する。

事例1:A小学校は5月の初め頃から欠席者が増加傾向にあり、欠席者数は約100名となった。これらの欠席者の主症状は下痢、嘔吐、腹痛であった。食中毒、感染症の両面から調査を行ったが、給食は共同調理場から3つの学校に供給されており、他の2校での欠席状況は通常と変わらなかったことから、感染性胃腸炎が疑われた。ノロウイルス(NV)の定量PCRでは患者便41検体からNVは検出されず、非発症者便17検体中1検体からNV genogroup (G)Iが検出された。電子顕微鏡(EM)で患者便41検体中23検体、非発症者便17検体中2検体からSRSVが検出された。SVのRT-PCRを行ったところ、患者便41検体中37検体、非発症者便17検体中2検体が陽性であった。シークエンスの結果、検出された株はSVのGIV (Houston7-1181/90株近縁)であった。NV GIが検出された非発症者からSVは検出されなかった。発生状況などの調査やSVの検出結果からNV GIはこの集団発生とは関係がなく、本事例はSVによる感染症事例であると考えられた。

事例2:B小学校は6年生の2クラスで5月19日〜20日にかけて欠席者が増加した。これらの欠席者の主症状は下痢、嘔吐、発熱であった。発症者が6年生のみに限られていたことから食中毒ではなく感染性胃腸炎が疑われた。患者便12検体からNVは検出されず、EMで患者便9検体中7検体からSRSVが検出された。SVはRT-PCRでは12検体中11検体が陽性であった。シークエンスの結果、検出された株はGII(Bristol/98株近縁)であった。この事例もSVによる感染症事例であると考えられた。

事例3:C小学校5年生の2クラスで欠席者が5月19日8名、20日13名となり、前の週と比べ数倍増加した。これらの欠席者の主症状は下痢、嘔吐、腹痛、発熱であり、発症者が5年生のみに限られていたことから食中毒ではなく感染性胃腸炎が疑われた。NVの定量PCRでは患者便11検体からNVは検出されず、EMで患者便11検体中8検体からロタウイルス粒子が観察された。ウイルス確認のために行った検査で、A群ロタウイルス抗原検出用ELISA は11検体すべて陰性であったが、CHRVは逆受身赤血球凝集反応(RPHA)法で11検体中7検体が陽性となり、RPHA価は16〜256倍であった。またCHRVのRT-PCRではすべての検体が陽性であった。シークエンスの結果、1996年に岡山県で発生した散発事例由来株KW290(AB086967)に近縁であった。これらのことから本事例はCHRVによる集団胃腸炎であることが示された。調査の結果、最終的に5年生53名のうち下痢、嘔吐、腹痛、発熱のいずれかの症状を示した患者は19名であった。その後、感染拡大防止のための指導を行ったことや、土日の休日があったことから、これ以上の拡大はおさえられた。

2005年5月に神奈川県域ではSVのGII 、IVおよびCHRVを原因とする集団胃腸炎が異なる地域の3つの小学校で発生した。

今までNVによる集団胃腸炎は小学校や老人保健施設などで多くみられていたが、SVやCHRVによる集団胃腸炎が新たに確認されたことから、今後はこれらのウイルスの動向についても監視する必要がある。

神奈川県衛生研究所・微生物部
古屋由美子 片山 丘 宮原香代子 伊達佳美 尾上洋一 新川隆康

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