コレラ毒素産生性Vibrio cholerae O139感染事例−山形県

(Vol.27 p 9-10:2006年1月号)

コレラの届出基準は、Vibrio cholerae O1またはV. cholerae O139を分離・同定し、かつ、コレラ毒素(CT)産生性あるいはCT特異遺伝子保有が確認された場合となっている。日本におけるコレラ感染者は年間50人前後報告されているが、そのほとんどはV. cholerae O1によるもので、O139による症例は極めて稀である。今回、本県では初めてCT産生性V. cholerae O139検出事例を経験したので報告する。

2004(平成16)年10月7日、医療機関から中国旅行帰りの患者便培養でV. cholerae が検出されたので、性状の確認および血清型、CT産生性の検査をしてほしい旨、連絡があった。送付された菌株を検査したところ、性状は、TSI:黄/黄、ガス−、硫化水素−、LIM:リジン+、インドール+、運動性+、食塩加ペプトン水発育0%+、3%+、8%−、10%−、VP+、IPA−、シモンズクエン酸+、オルニチン+、尿素−、DNase+、チトクロームオキシダーゼ+で、V. cholerae と同定された。血清型別は、市販のコレラ菌免疫血清(デンカ生研)を用いた凝集試験で、O1混合血清には凝集せず、O139に強い凝集を認めた。また、PCRによりコレラ菌関連遺伝子(O1特異遺伝子、O139特異遺伝子、CT特異遺伝子)の有無を検査したところ、O139特異遺伝子およびCT特異遺伝子を検出した。

患者は山形県A町在住の48歳女性で、2004年9月29日に中国上海に単身赴任中の夫を訪ね、10月3日、夫とともに帰国した。帰国翌日の昼頃から吐気、夕方から水様性下痢(30分おきに1回)、脱水症状などを呈し、5日に医療機関を受診、入院となった。同日、検便を行い、10月7日当該菌が検出された。村山保健所で患者以外の家族5人の検便検査を行った結果、夫からもCT産生性V. cholerae O139が検出された。夫は無症状であった。患者の子ども2人は、腹部不快感、軽い下痢など軽度の症状があったものの、当該菌は検出されなかった。

患者は、中国上海に滞在中、夫が居住しているアパートに宿泊し、上水道を使用している。また、外出先での飲用水はペットボトル水を使用し、生水、氷入りの飲み物は飲んでいない。夫からの人→人感染なのか、現地で喫食した食品からの感染なのかは特定することはできなかった。

山形県衛生研究所・微生物部
最上久美子 村田敏夫 水田克巳 保科 仁 大谷勝実 早坂晃一
山形県村山保健所・地域保健予防課
  同    ・検査課

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