2005年11月中旬〜12月初旬におけるAソ連型インフルエンザウイルスの地域流行−愛知県

(Vol.27 p12-12:2006年1月号)

2005年11月中旬(2005年第46週)に、愛知県尾張西部地域において今冬初のインフルエンザ地域流行がみられた。流行地域から愛知県衛生研究所に搬入された6名の患者の鼻汁、咽頭ぬぐい液からAソ連型インフルエンザウイルスを検出したので報告する。

インフルエンザ定点の患者報告では、第46週以降、主に尾張西部からA型インフルエンザの報告が相次いだ。同地域から愛知県衛生研究所に搬入された検体は12月14日現在で3施設からの10検体である。そのうち、インフルエンザウイルスが検出されたのは同3施設からの6検体であり、いずれもAソ連型であった。

表1に検体の概要を示す。検体はMDCK細胞に接種し、いずれも初代培養でCPEを認めた。HI試験は国立感染症研究所から配布された2005/06シーズン用の抗血清と、2004/05シーズン用抗血清の抗A/Moscow/13/98を用い、0.5%ガチョウ赤血球を用いて実施した。その結果、抗A/New Caledonia/20/99血清に対しては株によってばらつきはあるものの160〜640(ホモ価 320)、抗A/Moscow/13/98血清に対して10〜20(ホモ価 320)、抗A/New York/55/2004血清に対して<10(ホモ価 1,280)のHI価を示した。そこで AH1型と同定した。検出された全6株の抗原解析を表2に示す。なお、抗B/Shanghai(上海)/361/2002血清、抗B/Brisbane/32/2002血清に対しては、いずれも<10であった。

分離された1株についてはその遺伝子解析を試みた。培養上清からウイルスRNAを抽出し、RT-PCRでインフルエンザウイルスのHA1領域を増幅してシークエンスしたところ、A/New Caledonia/20/99のHA1遺伝子と塩基配列では98%の相同性が認められた。アミノ酸配列はA/New Caledonia/20/99株とは5箇所のアミノ酸が異なっていたが、A/New Caledonia/20/99と極めて近縁であることが判明した。なお、6株全株についてNA亜型同定用のプライマーでRT-PCRを実施したところ、すべてN1のプライマーのみ遺伝子が増幅されたことから、6株ともNAはN1亜型であり、A/H1N1型と同定された。

愛知県衛生研究所・微生物部
秦 眞美 續木雅子 伊藤 雅 山下照夫 長谷川晶子 小林愼一 榮 賢司

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