2005(平成17)年3月に、県内の知的障害者入所更生施設(入所者:60名、職員:31名)の入所者、職員やその家族等39名(うち、無症状病原体保有者が21名)が細菌性赤痢(Shigella sonnei I相)に感染するという事例が発生した。
端緒:同施設の入所者(60代・女性)が2005(平成17)年2月25日から下痢・発熱の症状が続いたため2月28日にA医療機関を受診したが、血糖値が異常に高かったため、B病院に入院した。
同患者について、細菌検査を実施していたA医療機関から最寄りの保健所に細菌性赤痢患者発生の届出が3月7日にされ、患者は感染症指定医療機関に転院した。
経過:届出を受けた保健所では、同日、感染症担当課と食品衛生担当課の職員が同施設において施設管理者に対して施設内の消毒、手洗いの徹底等、まん延防止を図るよう指導した。
また、患者との接触者の健康調査として、同施設入所者および職員、患者の家族等の検便を3月8日〜3月22日にかけて実施した。この間の延べ検査件数(医療機関での実施を含む)は、入所者61件、入所者家族62件、職員33件、職員家族24件、施設訪問者5件、関連施設利用者76件の261件に上った。この結果、新たに次の38名から赤痢菌(S. sonnei I相)が検出され、このうち4名が感染症指定医療機関に入院した。なお、当該施設が病原体保有者とその他の入所者の接触を避けることが可能な構造であることから、入所者の無症状病原体保有者については同施設で治療することとした。
3月10日診断:15名(入所者12名、職員3名) | |
3月11日診断:5名(入所者4名、職員1名) | |
3月12日診断:6名(入所者6名) | |
3月13日診断:9名[入所者3名、入所者(患者)家族4名、職員(陰性)の家族1名、 | 施設訪問者1名] |
3月14日診断:2名[入所者(陰性)家族1名、職員(患者)家族1名] | |
3月16日診断:1名[入所者(患者)家族1名] |
これらのうち、3月11日までに診断された21名から採取した菌株について、県衛生研究所においてパルスフィールド・ゲル電気泳動による解析を実施したところ、これらについてはほぼ同様のパターンであった。
同施設における食事の提供は、同施設内において職員が調理したものを提供しており、保存されていた検食207検体について赤痢菌の検査を実施したが、すべて陰性であった。また、病原体保有者を含む関係者の中に海外渡航歴のある者等も無く、今回このような感染に至った原因については特定することができなかった。
愛知県健康福祉部健康対策課感染症グループ