2家族から分離したShigella sonnei −宮城県

(Vol.27 p 67-68:2006年3月号)

宮城県で分離される赤痢菌の多くはShigella sonnei であり、2001年から現在までに16株が分離されているが、その事例の多くは単発発生であった。しかし、2005年9月に我々は2家族(H家、T家)がS. sonnei に感染した事例を経験したので報告する。

最初に届出された患者はH家の10歳・女児(a)で、9月19日に38℃の発熱、翌日には10回以上の激しい水様性下痢を呈した。20日に医療機関を受診したところ、検便からS. sonnei I相が分離され、22日に細菌性赤痢として届出された。当該保健所が接触者調査および検便を行ったところ、aの母(b)も21日から発熱、腹痛、下痢の症状を呈しており、S. sonnei I相が分離された。その他の接触者およびふきとり検体からは検出されなかった。

保健所の聞き取りで、18日にaが友人宅であるT家を訪問していたことが判明したため、調査範囲をT家に拡大して再度調査を実施した。

T家は両親と患者aの友人(c)、弟(d)の4人家族で、両親には症状が認められなかったものの、cは19日から40℃の発熱と下痢が見られ、20日に医療機関で抗菌薬の投与を受けていた。またdも19日に38.8℃の発熱があったが下痢症状はなく、熱も翌日には緩解したため、抗菌薬投与は行われていなかった。

そこで、T家の家族について23日(両親、d)と25日(c)に採取された検体について検査を実施したところ、両親とcは赤痢菌陰性であったが、dからS. sonnei I相およびII相株を分離した。

a、b、dから分離したS. sonnei はいずれも定型的な赤痢菌の性状を示し、invE およびipaH を保有していた。分離された菌の制限酵素Xba Iによるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンでの菌株a、b、d1(I相株)、d2(II相株)の類似度はいずれもDice法で90%以上であり、aとd1のパターンは100%一致した(図1)。

aとcは18日に地域の祭りに参加していたが、他の参加者からの苦情はなかったことから、2家族内での感染と考えられた。なお、T家の母親は東南アジアへ旅行し、15日に帰国していた。

宮城県保健環境センター
田村広子 佐々木美江 川野みち 畠山 敬 谷津壽郎 秋山和夫

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