沖縄県における麻疹全数把握事業の成果

(Vol.27 p 87-88:2006年4月号)

はじめに

県内の麻疹‘0’を目指して2001(平成13)年4月に、はしか‘0’プロジェクト委員会が発足した。同時に、県福祉保健部健康増進課、県衛生環境研究所、および県医師会等と調整を行い、全数把握実施要領と発生時対応ガイドラインが策定され、2003(平成15)年1月から開始した。本県のサーベイランスシステムは、報告例のウイルス学的検索を附加してその有効性を確立し、感染拡大防止への行動が迅速に行われるように運用されており、この3年間で次第に定着しつつある。

1.全数把握実施要領(図1

県内の医療機関は麻疹と診断されたすべての症例を、それぞれの地域の保健所へ所定の用紙にて報告し、県健康増進課が集計して週報で各関係機関へ送付する。発生届出をうけた保健所はそれぞれの管内の市町村および医療機関へ直ちに情報提供を行い、発生時対応ガイドラインに基づいて行動を開始することになっている。麻疹発生初期の散発例および終息期の症例については、ウイルス学的検索のために検体を県衛生環境研究所へ送り、確定診断へつなげることになる。地域保健所は報告例の追跡調査を医療機関を通して行い、その結果に基づいて確定診断の有無と発生状況について、関係各機関への情報還元を行っている。さらに、はしか‘0’プロジェクト委員会は情報の流れに注目して、随時検討委員会を開催し、症例の最終確認と発生状況を把握し、県予防接種対策協議会と連携をとりながら適切な対応を行っている。マスコミや一般市民への情報提供は県の健康増進課が行う。

2.2005(平成17)年は麻疹発生‘0’を達成(表1

2003〜2005(平成15〜17)年までの全数把握の実績は表1に示すごとく、平成15年39例、平成16年33例、平成17年は29例が報告されたが、ウイルス学的検索および保健所の追跡調査により確定診断された症例は、平成15年20例、平成16年15例、平成17年0例であった。本県においても平成17年は麻疹発生0を達成した。

ウイルス検索のための検体提出率は、平成15年が64%、平成16年は79%、平成17年は86%で年々上昇しており、全数把握事業に対する医療機関の周知性、受容性の高まりを示している。麻疹ウイルスの遺伝子型は、平成15年はD5・2例、H1・4例で、本県において初めてのH1が検出された。平成16年は離島(宮古島)発生例にD3・3例が検出されたが、本島発生例ではH1のみ検出された。このD3は1998〜1999(平成10〜11)年および平成13年の県内での大流行時に検出された麻疹ウイルスと一致していたが、今回の発生例へのつながりは考えにくく、輸入例であることが推測された。本島中部地域での集団発生例から検出されたH1は、遺伝子解析からみた部分塩基配列(N遺伝子)はすべて一致していた。しかし前年に検出されたH1ウイルスとは若干の相違がみられ、同時期に台湾で検出された麻疹ウイルスにより近縁であることが分かった。いずれの集団発生もワクチン接種率が90%以上の地域に発生したもので、関係機関の迅速な防疫対策により感染拡大が防止され、短期間で終息した。

麻疹の発生報告は臨床診断でおこなわれるが、血清学的検査(IgM およびIgG 測定など)も併せて実施されており、保健所の追跡調査の際に把握している。このように血清学的検査やウイルス学的検索は麻疹の確定診断に極めて重要であり、さらに遺伝子解析は感染経路の推測や流行株の把握に有用な手法である。

3.まとめ

平成17年は、全数把握では29例が報告されたが、麻疹と確定診断されたものは‘0’であった。麻疹発生が減少するにつれて、確定診断を伴うサーベイランスは極めて重要である。本県における1歳児のワクチン接種率は84%台であることから、麻疹排除(elimination)の段階ではない。1歳児の麻疹ワクチン接種率95%以上の達成を目指して、はしか‘0’プロジェクトを今後とも継続して推進していかなければならない。

沖縄県はしか‘0’プロジェクト委員会 知念正雄
沖縄県福祉保健部 仲宗根 正 伊礼壬紀夫 新垣美智子
沖縄県衛生環境研究所 中村正治(現:中央食肉衛生検査所) 平良勝也

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