2004年8月9〜12日の期間に、フランスVendee地方の工場を改築した家で休暇を過ごした後に発症した、15例の野兎病が確認された。その工場の立ち入り調査が行われ、記述疫学調査、後方視的コホート調査と環境調査が実施された。7月24日〜8月11日にかけてその工場に滞在した39人に対し、症状、喫食歴、動物接触歴、そしてレジャー活動について質問調査が行われた。
症例定義は、発熱があり、かつ血清学的陽性所見(抗体陽転、または抗体価の有意上昇、または単一血清での抗体価≧40)を示した者とされた。飲料水、薪、工場内の飼育動物について、Francisella tularensis の培養とPCR検査が実施された。
15例(38%)が野兎病と確定された。そのうちの12例(80%)が肺型(少なくとも1つの呼吸器症状があるか、または胸部X線検査にて異常陰影を認める)、3例(20%)がチフス型であった。入院した症例はなかった。症例は成人10例、小児5例で、年齢は6〜49歳(中央値39歳)、男女比は1.1であった。症例はグループを形成しており、発症日は8月9〜12日で、単一曝露による感染が示唆された。
感染と、8月4日の工場での夕食会に参加したことの間には、強い関連性がみられた( p<10-8)。ダイニングルームにいた3匹の犬のうち、1匹が血清学的に陽性であった。環境検体の検査結果はすべて陰性であった。
ヒト症例が肺型であったことと、犬が血清学的に陽性であったことから、犬が体を振るわせることによって、犬の毛から細菌汚染粒子が舞い上がり、それを吸入することで感染したと推測された。
(Eurosurveillance Monthly, February 2006)