ポリオワクチン株ウイルスの家族内感染−静岡県

(Vol.27 p 104-104:2006年4月号)

2005年5月末日、9カ月児が初めてポリオ予防接種を受け、その後下痢が続き、便の処理を行った40代父親(ポリオワクチン接種歴不明)が、2005年6月初めに、発熱(39℃)、全身倦怠感の臨床症状を呈し、県内の医療機関を受診した。

2005年6月中旬に、ポリオ(急性灰白髄炎)の疑いで検体(9カ月児から糞便、父親からは糞便と咽頭ぬぐい液)が採取されたので、Vero、RD-18およびHEp-2細胞を用いてウイルス分離、ウイルス同定、およびPCR-RFLP法を用いたポリオウイルスの型内株鑑別を試みた。

糞便については3,000rpm 20分間遠心後、上清を採取し、さらに10,000rpm 20分間冷却遠心した上清、咽頭ぬぐい液は3,000rpm 20分間遠心した上清を試料とし、3種類の細胞に接種したところ、9カ月児の糞便、父親の咽頭ぬぐい液からウイルスが分離され、ウイルス同定検査の結果、ポリオウイルス1型であることが確認された。また、分離されたポリオウイルスがワクチン株か野生株かの鑑別を、VP3/VP1を標的としたPCR-RFLP法により実施したところ、Dde Iで360・120bp、Hae IIIで229・140・111bp、Hpa IIで278・202bpに切断され、いずれもワクチン株であるSabin 1型と判定された。

また、Sabin株特異的モノクローナル抗体を用いた鑑別試験でもワクチン株と同定された。

本事例は、麻痺等後遺症を残すことなく完全に回復したと報告されているが、ポリオワクチン接種児からの家族内感染が推定され、ポリオワクチン接種後は十分な注意が必要と思われる。

静岡県環境衛生科学研究所
杉枝正明 足立 聡 稲吉 恵 三輪好伸 増田高志
静岡県熱海保健所 坪田皆利 真野穂積 岩間真人
川名臨海学園診療所 村上吉男
国立感染症研究所ウイルス第二部 吉田 弘 清水博之

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