2005年に広域において見出された同一PFGEタイプを示す腸管出血性大腸菌O157について

(Vol.27 p 144-144:2006年6月号)

国立感染症研究所細菌第一部に送付され、解析を行った2005年分離のヒト由来EHECは2,389株あり、そのうちO157は1,807株、O26は383株であった(2006年3月現在)。

2005年にはXba Iによるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンがO157で780種類(Type No.a1〜a780)見られ、少なくとも3つ以上の異なる都道府県から分離された同一PFGEパターンが34種類あった。このうち、6以上の都道府県から分離されたO157には7種類の泳動パターンがあり(図1)、Bln IまたはSpe IによるPFGEパターンにおいてもそれぞれ同一パターンと考えられた。7種類の泳動パターンのうち、Type No.52, 112, 413については2004年分離株においても見いだされていたが、Type No.a230, a264, a27, a491については2005年になって出てきたパターンであった。これらの株が分離されている期間は約10日〜1年の長期にわたっているものまでさまざまであった。分離期間が約10日と比較的限定された発生を示したType No.a491を示す株については、6県からの分離であるにもかかわらず、Multilple-locus variable-number tandem repeat analysis(MLVA)法においても同一のタイプを示し、それぞれの遺伝学的関連性が極めて高い可能性が示唆された。一方、分離期間が6カ月の長期にわたっているType No.112のパターンを示す株は、2004年に引き続いて10都府県の広域から分離されており、O157のなかでの分離比率は、1.4%であった。このパターンについては、2004年分離株において、MLVAによりPFGEパターンが同一の分離株内でも多型性が見いだされており、より詳細な検討が必要だと考えられる。

このように広域に及ぶ同一PFGEタイプのO157による事例が発生していることが判明したものの、それぞれのタイプにおける汚染源が共通のものであるかについては不明である。今後の事例発生の早期探知による拡大予防が必要であるとともに、原因究明に向けた対策が重要である。

国立感染症研究所細菌第一部
寺嶋 淳 泉谷秀昌 伊豫田 淳 三戸部治郎 渡辺治雄

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