B型インフルエンザウイルスによる中学校における集団発生−埼玉県

(Vol.27 p 151-151:2006年6月号)

2005/06シーズンの埼玉県における定点当たりインフルエンザ報告患者数は、2006年第5週にピーク(45.13人)を迎えた後に暫減し、第9週には定点当たり患者数が10人未満となった。インフルエンザウイルスは2005年第49週〜2006年第11週までに、A/H1N1型22株、A/H3N2型50株、B型(ビクトリア系統)4株が分離された。第12週以降は分離が無く、県内のインフルエンザ流行は終息に向かっていると思われたが、第16〜17週に県内の1中学校において、B型インフルエンザウイルスによる集団発生が認められたので、その概要を報告する。

当該中学校は、在籍者297人、各学年3クラスの規模である。表1に示したように、第16週に入って欠席者が目立ち始め、週末には46人、第17週の月曜日には61人に達したため、その翌日から2日間の学校閉鎖の措置がとられた。

患者3名からウイルス検査用の鼻汁検体が校医により4月26〜28日に採取され、衛生研究所に搬入された。3検体ともMDCKにおいて接種3〜4日後に明瞭なCPEが認められ、赤血球凝集価は1:128に達した(0.5%七面鳥および0.75%モルモット赤血球)。これらの培養上清を用いて、国立感染症研究所インフルエンザウイルス室から配布された2005/06用同定キットにより赤血球凝集抑制試験を実施したところ、3検体ともA/New Caledonia/20/99(ホモ価 320)、A/New York/55/2004(ホモ価 1,280)、およびB/Shanghai(上海)/361/2002 (ホモ価 640)の各抗血清に対してHI価<10、B/Brisbane/32/2002(ホモ価 5,120)抗血清に対してHI価 2,560を示し、ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルスであることが確認された。

なお、第16〜17週に県内別地区で採取された散発例の検体からも、3株のビクトリア系統B型インフルエンザウイルスが分離されている。

近年、いわゆる非流行期におけるインフルエンザの小流行が各地で報告されている(IASR 26:243-245および302-304, 2005)。非流行期のインフルエンザウイルスの動向は、次のシーズンの流行予測のうえで重要なデータとなるため、今後も慎重に監視することが重要である。

埼玉県衛生研究所ウイルス担当
島田慎一 河橋幸恵 篠原美千代 内田和江 土井りえ 河本恭子 宇野優香
清水美穂 菊池好則
埼玉県鴻巣保健所保健予防推進担当
福島裕美 西澤 勉 野村浩代 佐藤夕子 半田さと子

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