アジア・太平洋諸島系住民における慢性B型肝炎のスクリーニング、2005年−米国・ニューヨーク市

(Vol.27 p 179-180:2006年7月号)

アジア・西太平洋諸国ではB型肝炎ウイルス(HBV)が常在流行しており、慢性HBV感染の有病率は2.4〜16%と推定されている。米国におけるアジア・太平洋諸島系住民についての、住民対象の疫学調査に基づいた有病率のデータは存在しないが、米国自体が常在流行の程度は低いので、彼らが米国の慢性HBV感染者のかなりの部分を占めると考えられている。ニューヨーク市におけるアジア・太平洋諸島系住民の慢性HBV 感染の有病率をみるため、「アジア系米国人B型肝炎プログラム(AAHBP )」は、現在実施されているB型肝炎のスクリーニング・評価・治療プログラムの参加者を対象に、血清反応陽性率の調査を行った。AAHBPはB型肝炎のスクリーニング、ワクチン接種、治療を無料で提供し、また教育プログラムも提供している。

調査は2005年1月22日〜6月30日の期間に、AAHBPのスクリーニングイベントの参加者に対して行われた。検査の際に自記式質問票を用いて、デモグラフィおよび疫学的情報が収集された。HBs抗原陽性の者を慢性HBV感染、HBs抗体陽性かつHBs抗原陰性の者を感染の既往、HBs抗原陰性かつHBs抗体陰性の者をHBVの感受性者と定義した。

調査の対象となったのは20歳以上で、今までにHBV血清検査を受けたことがないと回答した925人である。年齢中央値は45歳(20〜83歳)で、55%が男性であった。出生国は61%が中国、30%が韓国、7.4%が他のアジアの国(バングラデシュ、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、ベトナム)であった。情報が得られた者のうち、51%は米国在住が10年を超えており、77%は健康保険に加入しておらず、13%はHBV感染の家族歴があると回答した。

調査の結果、慢性HBV感染が15%、感染の既往が54%、HBVの感受性者が32%にみられた。慢性HBV感染の有病率は、男性では20%、女性では8.7%、20〜39歳では23%、40歳以上では9.6%、米国在住期間が5年以下の者では22%、5年を超える者では14%であり、出生国でみると中国では21%、韓国では4.6%、他のアジアの国では4.3%であった。米国で生まれた者10人では、慢性HBV感染はみられなかった。

ここに示すような包括的かつ地域ベースのスクリーニング・評価プログラムにより、慢性HBV感染のリスクを有する者に効果的にアプローチすることが可能となる。

(CDC, MMWR, 55, No.18, 505-509, 2006)

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