エンテロウイルス71型(EV71)の検出状況−愛知県

(Vol.27 p 177-178:2006年7月号)

愛知県(名古屋市を除く)では、2006年の手足口病患者報告数が第12週から増加傾向にあり、第20週の定点当たりの報告数は1.24人と前週比 1.4倍となっている。当所に搬入された2006年1月〜4月(発症月)の手足口病患者17名から、EV71が10株(うち2006年4月は3株)、コクサッキーウイルスA16型(CA16)が3株分離されている。検体の多くは本県尾張部の患者からで、他には上気道炎1名、不明発疹症1名の咽頭ぬぐい液、アフタ性口内炎1名の糞便からEV71が計3株分離されている。EV71の分離された患者13名の年齢層は4カ月〜6歳で、3歳以下が11名(85%)であった。

Vero細胞、RD-18S細胞より分離された上記16株について国立感染症研究所分与のCA10、CA16、EV71抗体を用いてウイルスを同定した。EV71分離株は、13株すべて標準株BrCr抗血清で中和可能であった。また、培養上清を用いてRT-PCR法にてエンテロウイルスVP1領域の遺伝子解析を行い、過去のEV71分離株と比較した。その結果、今季のEV71分離株は相同性が97.6〜100%であり、独立したクラスターを形成するものの、前回本県内で大流行をおこした2000年の分離株に最も近かった。

本県では2000年に手足口病患者70名から24株、無菌性髄膜炎患者143名から1株、2003年にも手足口病患者70名から20株、無菌性髄膜炎患者107名から7株のEV71が分離され、流行が確認されている。また2004年には、手足口病患者66名から2株分離されたが、同時期にCA16が39株分離されており、EV71とCA16が同時に流行していた。2005年は手足口病患者から初夏にコクサッキーウイルスA6型、夏季にCA16が分離され、EV71の分離は秋季以降であった。

このように本県においてはEV71の流行が繰り返されているため、2005年に採血された県内在住者 200名の血清を用いてEV71に対する抗体保有状況を調査した()。その結果、2歳未満の抗体保有率は0%で、2〜3歳、4〜9歳でも10〜20%であったが、10歳以上の年齢層では、50〜65%の抗体保有率であった。10歳未満の抗体保有率が低いことから、今後も引き続きEV71による手足口病、無菌性髄膜炎等の流行に注意が必要である。また、EV71は夏季に限らず検出される傾向が続いており、1年を通じた迅速な情報提供が必要であると思われた。

愛知県衛生研究所微生物部
伊藤 雅 長谷川晶子 山下照夫 小林愼一 秦 眞美 田中正大 皆川洋子

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