A型肝炎ウイルスによる食中毒事例−新潟市・新潟県

(Vol.27 p 178-178:2006年7月号)

2006(平成18)年5月15日と16日に、新潟市内の医療機関から新潟市保健所に3名のA型肝炎の患者が相次いで届出された。また、5月10日に新潟県長岡保健所にも1名のA型肝炎の患者が届出されていた。新潟市保健所では、食品を介した集団発生を疑い、調査を開始した。聞き取り調査の結果、長岡の患者を含む4名は、新潟市内の同一の回転寿司店でそれぞれ4月1日、3日(2名)、15日に喫食していたことが確認され、また5月2日(2名)、3日、4日に肝炎を発症していた。保健所ではその寿司店を感染源と疑い、さらに詳しい調査を行い、現在も継続中である。

A型肝炎ウイルスの検査を、寿司店の食品32件と、同従業員20件、患者4件、患者の家族と接触者49件の便を採取し、新潟市衛生試験所、新潟県保健環境科学研究所で行った。検査法はリアルタイムPCR法(ロシュ:ライトサイクラー)またはRT-PCR法(感染研病原体検査マニュアルおよび平成14年8月16日付第081600号による“ふん便及び食品中のA型肝炎ウイルスの検査法について”)で行い、陽性の検体についてはシークエンス(Gene Rapid:ダイターミネーター法)を行った後、遺伝子型検索を実施した。

その結果、新潟市保健所に届出のあった患者3名と従業員1名(4月上旬風邪ぎみで医療機関受診)からA型肝炎ウイルスが検出された。さらに従業員の妻は寿司店での喫食歴はないが、4月下旬に風邪ぎみで発熱があり、検査の結果、A型肝炎ウイルスが陽性であった。遺伝子解析の結果、いずれも1A型のA型肝炎ウイルスで、P1/2A領域の遺伝子塩基配列も一致した。DDBJにおけるBLAST検索では、Serpukhov-2001-10株(Ac.No.AY226610)に近縁であった。食品からはウイルスは検出されず、約1カ月の記憶を遡る喫食状況調査では、4名の患者に共通する食材は確認されなかった。

新潟市保健所は、同店が原因施設のA型肝炎ウイルスによる食中毒と断定し、27日から3日間の営業停止処分とした。また、感染拡大を防止するため、5月27日(土)と28日(日)の両日に電話相談窓口を開設し、その結果 400件を超す相談があり、その中には最近同寿司店を利用後、A型肝炎と診断された例が5件(新潟市管内1件、新潟県管内4件:調査後発生届が出された)、発熱、倦怠感などがあり肝炎を疑わせる症状のある人が14名ほどおり、これらの人に対して再受診や検便検査の勧奨等を行った。6月7日現在、電話相談後の検査で陽性者はでていない。

新潟市保健所
新潟市衛生試験所
新潟県福祉保健部
新潟県保健環境科学研究所

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