2006年、ポーランドにおいては麻疹の症例数が突然に増加した。2006年1〜5月に60例が報告され、うち43例(72%)が検査確定、16例(27%)が臨床診断、1例が検査確定症例との疫学的関連により診断された。2004年には11例、2005年には13例のみの報告であった。
2006年の発生の第1相(第3〜10週)では、症例の集積はウクライナとスロバキアに隣接するポーランド南東部から報告された。ポーランドにおける2006年の最初の症例は第3週の24歳男子学生で、1月にウクライナのKyivに11日間滞在し、Krakow(南部の都市)に戻った2日後に麻疹の発疹を発症したと報告されている。輸入例と考えられる別の症例は、ウクライナ西部の大学に通う30歳のポーランド人学生で、3月3日に故郷のPodkarpackie県(南東部)に帰省し、3月11日(第10週)に麻疹を発症した。第2相(第11〜19週)においては、症例はポーランドの中央部と西部に多く発見された。
60例のうち29例(48%)が男性で、73%は都市部の住民であった。43例(72%)は20歳以上の成人であった。ワクチンの2回接種を受けていたのは8例のみで、1回接種が15例、残り37例は未接種か接種歴不明であった。2回接種を受けていた患者はすべて、臨床診断のみであった。
ポーランドでは1975年に、13〜15カ月児を対象とした単味麻疹ワクチンの1回接種が導入されたが、2003年にはMMRワクチンに切り替えられた。1991年には2回目接種が7歳児を対象に導入されたが、2005年には2回目接種が10歳児を対象としたMMRワクチンに替わった。ワクチン接種率は1991年以降改善傾向にあり、3歳児の1回接種率は2004年に97.4%、8歳児の2回接種率は2003年に95.6%となっている。1998年の血清疫学調査の結果では、15〜19歳の若年者で麻疹感受性が最も高く、このことは、1998年の流行(N=2,255)で16〜20歳の年齢群が最も罹患したことから裏付けられた。
今回の集団発生は輸入2症例から発生したと思われるが、特別な介入なしに感染伝播は終息しつつあると思われる。これは、麻疹の排除(elimination)を達成しつつある国での特徴的パターンである。近年におけるヨーロッパでの流行からは、感受性のある若年成人が蓄積しており、それらが2世代以上の感染伝播を起こしている可能性が示されている。今回の発生については、症例からのウイルス分離と遺伝子型検査のための送付の努力がなされたが、これにより、循環しているウイルス株のモニタリングと症例集積の詳細な調査が可能となるであろう。
(Eurosurveillance Weekly, 11, 29 June, 2006)