無菌性髄膜炎を併発した手足口病の地域流行とエンテロウイルス分離状況−愛媛県

(Vol.27 p 229-230:2006年9月号)

2006年の愛媛県における手足口病患者数は、第19週(5月第2週)頃から増加傾向が見られ、緩やかな増加の後、定点当たり1人前後で推移している。第19週以降、県南西部の宇和島地区では、定点当たりの患者数が平均4.2人/週と多発しており、県内の患者報告数の約半数を占めている。また、同地区において無菌性髄膜炎を併発した例が複数報告されており、そのうち2名の検体からエンテロウイルス(EV)71型が分離された。今回は、宇和島地区で無菌性髄膜炎を併発した手足口病を中心に、EVの分離状況を報告する。

供試した検体は、2006年1月〜7月に感染症発生動向調査の一環として病原体定点等医療機関から搬入された咽頭ぬぐい液等391件で、ウイルス分離はFL、RD-18s、Vero細胞を用い、33℃で2週間回転培養して行なった。また、必要に応じて哺乳マウスも併用した。分離ウイルスの同定は、感染研分与および自家製抗血清を用いて中和試験を行なった。

宇和島地区から搬入された、無菌性髄膜炎を併発した手足口病患者4例、および無菌性髄膜炎患者3例の検体(咽頭ぬぐい液2、糞便5、髄液7件)について検査を実施したところ、2例からEV71がそれぞれ1株ずつ分離された。1株は1歳11カ月男児の糞便検体でRD-18sおよびVero細胞に、もう1株は8歳1カ月男児の糞便検体でRD-18s、FL(2代目)およびVero(2代目)細胞に感受性を示した。自家製抗血清(1978年分離株)を用い、これらの分離株の中和試験を実施したところ、RD-18s細胞ではどちらも難中和性を示したが、FLおよびVero細胞では容易に中和された。残り5例の検体(咽頭ぬぐい液1、糞便3、髄液5件)からは、ウイルスは検出されなかった。

2006年1〜7月のエンテロウイルス分離状況を月別、診断名別にに示した。今年のヘルパンギーナは、患者報告数のピーク時に定点当り7.3人/週を示し、大きな流行となっている。原因ウイルスとして、コクサッキーウイルス(C)A4型が9株、CA2、CA10がそれぞれ3株分離されており、今夏のヘルパンギーナはCA4を主流とした、CA2、CA10との混合流行を呈している。これらのウイルスは、上・下気道炎、熱性疾患からも検出され、広く蔓延していると考えられる。そのほか発疹症からはCA9が1株とエコーウイルス(E)5型が2株、また流行性耳下腺炎におけるムンプスウイルスとの重感染例で、E25が1株検出された。

今夏の手足口病の流行は小規模で、EV71が主原因と推測された。手足口病は夏〜秋にかけて患者が継続して発生するため、今後の発生動向を注意深く監視していく必要がある。

愛媛県立衛生環境研究所
市川高子 豊嶋千俊 近藤玲子 大瀬戸光明 井上博雄

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