小学校におけるA群溶血性レンサ球菌咽頭炎集団発生事例−新潟県

(Vol.27 p 237-237:2006年9月号)

感染症サーベイランス事業における小児科定点から,県央のK市立S小学校におけるA群溶血性レンサ球菌咽頭炎集団発生の報告があったので概要を報告する。

初発は5月12日で4年生2名がA群溶血性レンサ球菌咽頭炎で欠席,5月23日に終息し,以降の患者発生は認められなかった。発生はこの約10日間に集中しており,全校児童415名のうち,1年生の65名中2名,2年生の58名中1名,4年生の74名中6名,5年生の65名中3名の計12名が咽頭の発赤等上気道炎症状,38〜39℃台の発熱,発疹等の典型的症状を示し,迅速診断キット「ストレップA」[(株)三和化学]によりA群溶血性レンサ球菌咽頭炎と診断され欠席した。当該定点より搬入された咽頭ぬぐい液6検体について検査したところ,いずれもA群溶血性レンサ球菌陽性で,分離菌株の血清型はT1であった。

S小学校は1,2年生と3〜6年生の教室は別棟になっており,3,4年生の教室及び5,6年生の教室は同じ棟の同じ階にある。小学校という環境から,廊下,グラウンド等で他学年児童との接触の機会は複数あると考えられるが,特にS小学校では教室の掃除について,各教室の当番を毎日日替わりで,かつ,1〜6年生合同で行っており,これが感染の拡大の一因になったと思われた。

4月〜7月までの4カ月間に,当該定点から搬入されたA群溶血性レンサ球菌咽頭炎疑い患者の検体23件中15件(65%)からT1型A群溶血性レンサ球菌を分離しており,S小学校の6検体も含まれる。県央でのT1型A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行下で発生した,小学校での集団発生の1事例と考えられた。

新潟県保健環境科学研究所
寺澤 宏司
いからし小児科アレルギークリニック
五十嵐 隆夫

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