2002年に実施された結核療法研究協議会による薬剤耐性の全国の実態調査の成績が先般公表された。この調査は1950年代からほぼ5年おきに全国の結核入院施設の参加によって行われているもので、これらの参加施設から収集された結核菌培養分離株を中央(最近は結核予防会結核研究所)であらためて薬剤感受性検査を一貫して行っているもので、継続性・規模・精度ともに世界に誇るサーベイランス事業となっている。前回は1997年に実施されたが、このときを期に薬剤感受性検査の判定基準および検査方法をより国際性のあるものに転換し、今回もそれと同じ方法で行われた。
表1のように現時点で日本の結核菌の薬剤耐性の状況は、未治療(初回治療)患者に関する限り悪くはないし、最近5年間は安定している。ただし、既治療患者では、たとえば多剤耐性例が10%になんなんとしているなど、治療ははじめからきわめて困難な状況にある場合が少なくない。
ちなみに米国の成績(2001年)を比較のために記す[初回耐性:INH(0.2)7.7%、RFP 1.5%、SM 7.4%、EB 1.6%、何らかの耐性12.7%、多剤耐性1.1%、既治耐性:INH(0.2)14.0%、RFP 6.5%、SM 8.6%、EB 3.5%、何らかの耐性18.8%、多剤耐性5.2%]。既治療例において日本の薬剤耐性が高いのは、既治療例のなかに、再発例のほかに治療失敗例が比較的多く含まれていることが主な原因と考えられる。
国立感染症研究所ハンセン病研究センタ− 森 亨