2005年における野生株ポリオウイルス伝播阻止の進展

(Vol.27 p 280-280:2006年10月号)

1988年の世界保健会議総会における全世界的なポリオ根絶の決議以降、ポリオ常在流行国は1988年の125カ国から4カ国へと減少し、世界的な根絶の目標に向かって前進し続けている。

定期接種としての経口ポリオワクチン3回(OPV3)の接種率については、データはすべて2004年に関するものであるが、世界レベルでは乳幼児において80%と推定されている。WHO地域でみると、接種率が最も低いのはアフリカ地域で69%、最も高いのはヨーロッパ地域で94%であり、同一地域内でも国により大きな差がみられている。ポリオ常在流行国については、ナイジェリアで39%、アフガニスタンで66%、パキスタンで65%、インドで70%と推定されている。

2005年の画期的なことのひとつとして、1型と3型の単価経口ポリオワクチン(mOPV1、mOPV3)が再承認されて、補足的予防接種活動(SIAs)を含めて使用されたことが挙げられる。2005年には51カ国でSIAsが行われ、5歳未満の小児3億 7,100万人に計22億ドーズが接種された。

急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランスの質は、主に以下の3項目でモニターされている:1)非ポリオAFP率(目標は、15歳未満で1/100,000人以上)、2)AFP症例の中で適切に便検体が採取された率(目標は80%以上)、3)便検体のうち、WHOが認定したラボで検査が行われた率(目標は100%)。2005年では、すべてのWHO地域はAFPサーベイランスの感度に関して“認定レベル”を維持しており、同年に症例が報告されたすべての常在流行国、および再感染国における非ポリオAFP率は、2/100,000人以上であった。2005年にWHOは、世界的ポリオウイルス・ラボネットワークの145のラボのうち、97%を完全に認定したが、2005年にはそれらのラボで12万以上の便検体の分析が行われた。

ポリオ症例数は2006年3月31日現在、2004年の1,255例に対して、2005年は暫定数1,948例であった。2004年と2005年には、ナイジェリアから最も多くのポリオ症例が報告された(2004年782例、2005年799例)。2005年のナイジェリアの報告数のうち、746例(93%)は北部の10州からであったが、この地域では、1型と3型のポリオウイルスが広範囲に感染循環している。北部の6州では頻繁にSIAsを行ったにもかかわらず、5歳未満の小児の40%以上は一度もOPV を受けたことがないと推測される。

2005年における世界レベルでの症例数の増加は、ナイジェリアからポリオ根絶国であったイエメン、インドネシア、ソマリアに輸入されたことに続く、3件の大規模集団発生に起因する。しかし、以前にはポリオ根絶国であったが2003年以降に再感染国となった22カ国のなかでは、2005年中期以降も症例の発生をみているのは8カ国(アンゴラ、チャド、エチオピア、ソマリア、イエメン、ネパール、インドネシア、バングラデシュ)のみとなった。

2005年にはインドネシアのジャワ島東部沖の島において、ワクチン由来1型ポリオウイルス(cVDPV)によるものとしては過去最大の、麻痺性ポリオの集団発生(46例)がみられたが、これはおおむね、野生1型ポリオウイルスの集団発生と平行していた。本集団発生は、ワクチン接種率が低い地域ではcVDPV の発生する危険性が続くことを示し、またワクチン接種率の維持・向上の重要性と、一度野生型ポリオウイルスが根絶された場合には、OPVのルーチンの使用をすべて中止する必要があることを強調するものである。

(WHO, WER, 81, 165-172, 2006)

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