Campylobacter jejuni による食中毒は2001年以降事件数、患者数ともに増加しており、特に事件数は他の食中毒菌に比べ増加傾向が著しい(IASR 27: 167-168, 2006参照)。
新潟市でも2006年5月に牛レバーが原因と思われるC. jejuni による食中毒を2例経験したので報告する。
事例1:5月5日に自宅で行った法事での昼食会の席で居酒屋から購入してきた牛レバー刺身と別店の折り詰め弁当を食べた後、6日〜9日にかけて腹痛、下痢、発熱を呈した者があり、うち数人が医院を受診したため、法事の主催者が保健所に届け出た(表1)。
事例2:5月14日、市内の焼肉店で2家族が会食後、15日〜19日にかけて発熱、下痢、吐き気などの風邪様症状を呈した者があり、子供2人が小児科を受診し、検便の結果C. jejuni が検出されたため、患者家族が保健所に届け出た(表1)。
当所での食中毒発生時のカンピロバクター検査については、食品、便ともにCEM培地での増菌培養と変法CCDA、スキロー培地での分離培養を行っている。分離培養は通常42℃で1〜2日培養を行い、疑わしいコロニーについて、カタラーゼ試験、グラム染色実施後、馬尿酸塩加水分解試験、ナリジクス酸(以下NA)、セファロチン(以下CF)感受性試験を実施し、C. jejuni と決定している。分離株の血清型別については地方衛生研究所の北海道・東北・新潟カンピロバクターレファレンスセンターである秋田県健康環境センターに検査依頼している。
本事例の検査内容を表1に示した。ふきとり、食品から菌は検出されなかったが、患者便から、事例1では9株の、事例2では4株のC. jejuni が検出された。2事例とも16〜20時間後に微小ではあるが、平板にコロニーが観察された。事例1では直接培養で9株検出されたが、CEM培地での増菌培養では4検体で菌の確認ができなかった。事例2では直接、増菌培養ともに4株分離できた。馬尿酸塩加水分解試験はすべて陽性であった。NA、CF感受性試験と血清型別の結果を表2に示した。事例1、2ともにNA耐性の株がみられるなど、検出株のすべてが同一の結果を示さなかった。
調査の結果、牛レバーの飲食店への供給源、入手経路はそれぞれ異なっており、また食中毒調査に入った時点では、喫食した牛レバーはすでに消費されていて検査できなかった。しかし両事例とも加熱調理用のレバーを生食用として提供していたことや、カンピロバクターによる牛レバーの汚染は11.4%が陽性と報告されている(平成17年2月9日食安監発第0209001号)ことなどから、今回の食中毒事例は牛レバーを生食用として調理、提供したことによるものと推察された。
最後に血清型別を検査していただいた秋田県健康環境センターの関係者の方々に深謝いたします。
新潟市保健所食品衛生課
新潟市衛生試験所生活課