福井県での感染症発生動向調査病原体検査における無菌性髄膜炎患者由来検体の搬入数は、2002年のエコーウイルス13型による流行、2003年のB群コクサッキーウイルス1型による流行の終息後は少数にとどまっていた。しかし、2006年6月下旬以降、病原体検査定点からの検体搬入が急増し、主にB群コクサッキーウイルス5型(CB5)が分離されているので、その概況を報告する。
2006年9月10日までに小児科から受け付けた31症例(髄液30検体、糞便10検体、咽頭ぬぐい液9検体)のウイルス分離検査結果は、図1のとおりである。CB5が分離されたのは16症例(髄液12検体、糞便7検体、咽頭ぬぐい液3検体)で、他にB群コクサッキーウイルス6型が1症例(髄液1検体)から分離されている。また、手足口病および熱性けいれんの臨床診断名で搬入された1症例からもCB5が分離され(髄液・糞便・咽頭ぬぐい液の3検体のうち糞便1検体のみ分離陽性)、今シーズンのCB5分離は計17症例となっている。
CB5分離株は、CaCo-2およびHEp-2細胞でエンテロウイルス様の細胞変性効果を示し、単味抗血清で容易に中和された。流行初期(第24〜26週)に採取された検体については、HEp-2のみ分離陽性となった髄液4検体が存在するなど、培養細胞の種類による分離率の差がみられたが、第27週以降の検体では差は認められなかった。
患者の年齢分布は図2のとおりで、0歳と4〜8歳に集中した。また、成人における無菌性髄膜炎の発生数が例年にくらべ多いという神経内科からの情報もあり、成人の検体も7症例受け付けたが、今のところウイルス分離陽性例はない。
定点医療機関における無菌性髄膜炎患者報告数は、第23週の今シーズン初発患者報告以降ゆるやかに増加し、第30週の13名をピークにいったん減少へ転じたものの、依然として患者発生が続いており、今後も動向に注意したい。
なお、福井県内でCB5が複数分離されたのは1994年以来のことであった。
福井県衛生環境研究センター 東方美保 中村雅子 川畑光政 浅田恒夫