2006年9月に発生したB型インフルエンザの地域流行―広島県

(Vol.27 p 268-269:2006年10月号)

2006年9月に広島県南部に位置するA市内において、B型インフルエンザの地域小流行が認められ、医療機関を受診した患者2名からB型インフルエンザウイルスが分離されたので、その概要を報告する。

本県における2005/06シーズンのインフルエンザ患者の発生状況については、第4週に定点当たり42.2人のピークを迎えた後減少し、第11週には定点当たり0.68人となったが、その後も少数ながら患者の発生報告は続き、第32週にようやく終息したかに思われた。ところが、それから1月半後の第37週になって、A市内にあるK小児科を受診した患者5名が、インフルエンザ迅速診断キットによってB型インフルエンザ患者であることが判明し、さらに翌第38週にも同じ小児科医院において3名、合計8名のB型インフルエンザ患者が確認された。それらの患者8名の内訳は、小学生が4名(6歳、8歳が2名および11歳)、中学生が2名(13歳と14歳)、高校生が1名(16歳)、および13歳の中学生の母親(45歳)が1名であり、その臨床症状は38℃後半〜40℃台の高熱が主で、咳や鼻汁は軽度であった点が特徴的であった。

今回、K小児科医院でB型インフルエンザと診断できた患者は彼ら8名だけであったが、それらの患者の問診から、患者達と同じ中学校あるいは高等学校に通っている生徒の中にも、同様の症状を呈していた者が、それぞれ複数存在していたことが明らかとなり、このことからA市内において9月中旬〜下旬にかけて、B型インフルエンザの小流行が起こっていたことが判明した。

迅速診断キットでB型インフルエンザと診断された患者のうち、8歳と14歳の2名については、ウイルス分離のための鼻腔吸引液が採取されたので、それらの検体について当センターにおいてMDCK細胞を用いてウイルス分離を行った。その結果、細胞は接種後5日目に著明なCPEを示し、培養上清は0.75%モルモット赤血球で、いずれも16HA価を示した。そこで、それらのウイルス株を国立感染症研究所から分与された2005/06シーズン用の抗血清を用いてHI試験を実施したところ、A/New Caledonia/20/99(H1N1)(ホモ価640)、A/New York/55/2004(H3N2)(ホモ価1,280)、B/Shanghai(上海)/361/2002(ホモ価 320)の各抗血清に対しては、いずれもHI価 <10を示したが、ビクトリア系統のB/Brisbane/32/2002(ホモ価 1,280)抗血清に対しては、どちらの株もHI価 1,280を示したことから、分離株はビクトリア系統のB型ウイルスであることが判った。

我々は広島県内において、2005/06シーズン中の第18週〜第28週の間に、合計11株のB型インフルエンザウイルスを分離していたが、それらの株もすべてビクトリア系統のウイルス株であった[B/Shanghai(上海)/361/2002抗血清に対するHI価はいずれも<10、B/Brisbane/32/2002抗血清に対するHI価は640〜2,560]。今回新たに分離された2株のB型ウイルス株もHI試験の結果を見る限りでは、それまでに分離されていたビクトリア系統のB型ウイルス株と抗原的に大きな違いは認められないようである。

本年9月に発生したB型インフルエンザの流行が、2005/06シーズン最後の流行で、今後はいったん終息するものなのか、それとも2006/07シーズンの先駆けとして、さらに大きな流行へと続いていくものなのか、今後注意深く監視していく必要があると考えている。

広島県保健環境センター 高尾信一 島津幸枝 宮崎佳都夫
広島県感染症情報センター 畑本典昭
神垣小児科 神垣昌人

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