家禽におけるH5N1感染が発生したカンボジアの一農村において、ヒトにおける症あるいは無症状の感染は生じていないとする証拠

(Vol.27 p 320-320:2006年11月号)

インフルエンザウイルスA/H5N1亜型による多数の家禽の死亡が生じたカンボジアの一農村において、同ウイルス感染症に関する血清学的調査、および危険因子に関する調査が行われた。この村では、2005年3月中旬に28歳男性が重症なインフルエンザを発症し、その後死亡したが、H5N1感染が確定している。調査は3月下旬に、この男性の家から半径1km以内の範囲で行われた。サンプルとして抽出された家庭のほとんどがニワトリやアヒルを飼育しており、それらの家庭の70%以上では、男性が死亡する前の数週間の時期に、家禽の死亡がみられていた。血清検査のために選ばれた354人のうち、351人が調査に参加した。採取された血液検体はWHO 検査室で抗体の検査が行われた。ほとんどの被検者が家禽との頻回の直接的な接触があったにもかかわらず(これらの家禽の一部では感染が確定している)、H5N1に対する中和抗体は351人すべてで陰性であった。

今回のカンボジアでの調査結果は、このヒト集団では無症状あるいは軽症のH5N1ウイルス感染は起きなかったこと、そして、H5N1感染の発生は起きにくいことを強く示唆している。結論を出すには、他の地域でも同様な結果が得られる必要があるだろうが、ヨーロッパCDCが発表した公衆衛生上のアドバイスがより科学的に支持されたことは、安心材料でもある。また、鳥インフルエンザには多くの異なる種類があるが、それらのヒトへのリスクについては、たとえ高病原性のものであっても、それぞれ個別に考えるべきであることを強調している。

(Eurosurveillance Weekly 11, 7 September, 2006)

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