複数の福祉施設が関係したノロウイルスGIIの集団感染事例−山梨県

(Vol.27 p 317-317:2006年11月号)

2006(平成18)年9月に山梨県内の特別養護老人ホーム(施設A)および障害者福祉施設(施設B)を中心とするノロウイルス genogroup(G)IIの集団感染事例が発生したのでその概要を報告する。

9月17日、施設Aから管轄保健所に嘔吐、下痢を呈した入所者がいるとの連絡があった。聞き取り調査の結果、施設Aの清掃作業をしている施設Bの利用者が、9月15日の清掃作業時に便失禁し、便で汚染されたモップで廊下などを全館拭き掃除していたことが判明した。しかし、施設Aでは便失禁の判明したフロアーのみを清掃し、同日夜全職員が別の階で避難訓練を実施していた。この清掃作業者は病院を受診し、整腸剤を処方された。

この清掃作業者は施設Bのグループホーム入所者で、他の3名と居所を共にしている。このうち2名に下痢などの症状のあることが判明し、糞便からノロウイルスGIIが検出された。しかし、便失禁した清掃作業者については検体採取ができなかった。

9月17日午前、施設Aの全館を適正濃度の次亜塩素酸で拭き掃除したが、同日の深夜、施設Aの入所者1名、職員5名が下痢、嘔吐などで発症した。9月18日、手洗いや次亜塩素酸による清掃など、感染防止対策を指導するとともに、施設Aの入所者5名、調理従事者8名の検便、厨房のふきとり検査(細菌検査のみ)を行った。その結果、入所者5名、調理従事者3名からリアルタイムPCR法でノロウイルスGIIが検出された。このため、施設Aの給食の自粛と二次感染防止を指導した。

9月20日障害者通所授産施設(施設C)の利用者1名が施設Bへ訪問後に体調不良を訴えているとの連絡があり、調査を開始するとともに感染拡大防止を指導した。また、この者を含む施設Cの利用者2名について検便を実施して1名からノロウイルスGIIが検出された。

各施設では外部との接触制限など、自発的な感染防止対策をとり、9月24日に施設Aの職員1名とその家族(接触者)3名が発症したのを最後に、新たな発症者は確認されなかった。最終的な発症者数は施設A(利用者181名中58名、職員等112名中25名、接触者3名)、施設B(利用者80名中20名、職員等29名中1名)、施設C(利用者23名中1名)の計108名であった()。糞便からノロウイルスGIIが検出されたのは施設A(利用者5名中5名、職員等17名中8名)、施設B(利用者6名中5名、職員等6名中1名)、施設C(利用者2名中1名)の計20名であった。

給食を食べていない利用者や職員が初期に数名発症していることなどから、食中毒ではなくノロウイルスGIIによる感染性胃腸炎の集団発生と断定した。今回の事例では各施設間の交流の中で感染した可能性が高いものの、感染経路は特定できなかった。現在、各施設から検出されたノロウイルスについて遺伝子塩基配列を解析して関連性を調査している。9月の上旬には山梨県内の別の老人ホームでノロウイルスGIIの集団感染が発生しており、多くの者が入所する施設においては非流行期でもノロウイルス感染対策が重要であると考えられた。

山梨県衛生公害研究所 山上隆也 原 俊吉

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