2006年8月、神奈川県内の茅ヶ崎市および平塚市において同一感染源が示唆される腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7(VT1&2)の患者が発生したので概要を報告する。
8月28日茅ヶ崎保健所に医療機関からEHEC O157:H7(VT1&2)患者Aの発生届が提出された。Aは茅ケ崎市在住の小児で、8月24日より腹痛、嘔吐、発熱がみられた。家族検便の結果B、CおよびDからもEHEC O157:H7(VT1&2)が検出された。
9月1日平塚保健所へ患者EのEHEC O157:H7(VT1&2)の発生届が提出された。患者Eは、8月24日から腹痛により入院していたことが判明した。Eの家族検便を実施したところ、FからEHEC O157:H7(VT1&2)が検出された。
保健所の調査によりA、BおよびCの家族は、8月19日および20日に平塚市内の患者E宅に行き、食事を共にしていたことが判明した。このことから感染源として両家族の共通食である8月19日および20日の食事が疑われた。DはE宅に行かずに発症しているが、Bのオムツの交換を行っていたことから、家族内感染の可能性があると思われた。
さらに8月28日〜9月7日にかけて、散発的に平塚保健所へG、H、IおよびJの4名のEHEC O157:H7(VT1&2)患者の発生届が提出された。喫食調査等から4名の患者宅では、同一系列店をよく利用していることが判明したが、購入した品物や購入月日は異なっていた。
患者の状況を表に示した。
茅ケ崎保健所および平塚保健所管内の患者10名より分離した菌株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)による遺伝子解析を実施した。その一部のパターンを図に示したが、患者Cにおいてバンド1本の相違があるものの、同一パターンと認められた。
患者10名より分離した菌株のPFGEパターンが一致したことから、今回のEHEC O157:H7患者の感染源は、同一であることが推察される。しかし、E宅での調査協力が得られなかったので、19日および20日の食事の内容や、食材の購入先は不明である。
疫学的には十分な情報は得られなかったものの、今回の患者の発生は血清型およびPFGEパターンが一致していることから、同一感染源の可能性が示唆された。
神奈川県衛生研究所
地域調査部茅ヶ崎分室 寺西 大 後藤喜子 梅津千里 小野 彰
微生物部腸管系細菌グループ 石原ともえ