日本のAIDS患者・HIV感染者の状況
  (平成18年7月3日〜10月1日)

(Vol.27 p 344-346:2006年12月号)

厚生労働省健康局疾病対策課
平成18年11月1日

エイズ動向委員会委員長コメント(要旨)
【平成18年第3四半期】

1.今回の報告期間は2006(平成18)年7月3日〜2006(平成18)年10月1日までの約3カ月である。法定報告に基づく新規HIV感染者報告数は233件(うち男性214件、女性19件。前回報告248件)で過去最高となった前回よりも減少したが、過去2位となった。前年同時期の新規HIV感染者報告数は205件である。

一方、新規AIDS患者報告数は107件(うち男性93件、女性14件。前回報告106件)で前回を上回り、過去2位となった。前年同時期の新規AIDS患者報告数は89件である。

2.感染経路別に見ると、新規HIV感染者では同性間性的接触によるものが136件(全HIV感染者報告数の約58%)と最も多く(前回約65%)、そのうち128件(約94%)が日本国籍男性であった。また、異性間性的接触による新規感染者報告数は64件[全HIV感染者報告数の約27%(前回約21%)、うち男性49件、女性15件]である。

一方、新規AIDS患者では同性間性的接触によるものが39件[全AIDS患者報告数の約36%(前回約38%)]、異性間性的接触によるものが39件[全AIDS患者報告数の約36%(前回約38%)、うち男性30件、女性9件]となっている。

年齢別では、新規HIV 感染者は20〜30代が多数(約69%)を占めるが(前回約66%)、40代以上の増加が指摘された前回の傾向が続いている[約30%(前回約31%)]。新規AIDS患者は30〜50代以上に広く分布している。

要約すると、感染者・患者とも87%以上を男性が占め、その中でも同性間性的接触による感染が約57%を占めているが、今回は日本国籍女性がHIV感染者13件、AIDS患者10件、合計23件(前回14件)と増加が認められた。また、前回の特徴である40代以上の増加傾向が続いている。

3.2006(平成18)年7月〜9月末までの保健所におけるHIV抗体検査件数は23,502件(前年同時期19,976件)、自治体が実施する保健所以外の検査件数は5,804件(前年同時期4,724件)、保健所等における相談件数は43,337件(前年同時期40,182件)となっており、保健所および保健所以外における検査件数、保健所等の相談件数はいずれも前年同時期より増加した。

4.2006(平成18)年1月〜9月末までの献血件数(速報値)は 3,738,551件(前年同時期 4,048,589件)で、そのうちHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数は74件、10万人当たりの陽性人数は1.979件(前年同時期1.309件)であった。前年同時期と比較し、陽性率が高かった。

5.この四半期における新規HIV感染者報告数およびAIDS患者報告数は、いずれも過去2位と高い傾向にあり、その合計数も過去2位となった。また、保健所および保健所以外における検査件数、保健所等の相談件数においては、6月のHIV検査普及週間で大幅に増加した第2四半期よりもさらに増加しており、前年同時期と比較しても増加した。

6.新規HIV感染者報告数を感染経路別に見ると、男性同性間性的接触は依然半数を超えているが、異性間性的接触による感染が日本国籍の男女とも増加している。また年齢別では、若年層にHIV感染が広がっているものの、前回に引き続いて40代以上の増加を認めた。このような傾向と、検査・相談件数が6月に実施したHIV検査普及週間以降も増加していることを合わせて考えると、利用者の利便性に配慮した検査・相談事業による検査体制の整備について一定の成果が認められる。今後もこの傾向が持続するのか注視していく必要がある。

7.各自治体においては保健所等を中心に、さらに利用者の利便性(夜間・休日等)に配慮した検査・相談事業を推進することが重要であり、HIV感染の早期発見による適切な治療の促進と感染拡大の抑制に努める必要がある。

各自治体(特に重点都道府県等)においては、今回の発生動向を考慮しつつ、エイズ対策推進協議会を開催し、予防も含めたエイズ対策計画を早急に策定の上、より一層のエイズ対策を推進されたい。

8.また国民はHIV・AIDSについての理解を深め、積極的な予防と、HIV抗体検査の早期受診に努めるべきである。12月の世界エイズデーが、国民一人一人にとってそのテーマである「Living Together〜私に今できること〜」を胸に、さらにエイズのまん延防止や差別・偏見の解消のために、ひとりひとりに何ができるかを国民全体で考えていく機会となることを期待している。

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