A/H3N2亜型インフルエンザウイルスの分離−埼玉県

(Vol.27 p 337-337:2006年12月号)

2006年第42週に採取された検体から、A/H3N2亜型インフルエンザウイルスを分離したので概要を報告する。

患者は喘息を基礎疾患に持つ3歳11カ月の女児で、2006年10月19日より、熱せん妄を伴った発熱(40.1℃)、鼻汁等の症状を呈し、インフルエンザ迅速診断キットによりA型陽性が医療機関で確認された。10月21日に検体が採取され、埼玉県衛生研究所において検査を開始した。なお、同時期に患児の通う幼稚園で数人に同症状が見られたとの情報があった。

検体を接種したMDCK細胞においてインフルエンザ様のCPEを認めたので、その培養上清(分離ウイルス)を用いてインフルエンザ迅速診断キットによる型別判定を行ったところ、A型陽性、B型陰性であった。次に国立感染症研究所インフルエンザウイルス室から配布された2006/07シーズン用同定キットによる赤血球凝集抑制(HI)試験を0.75%モルモット赤血球を用いて実施した。その結果は、A/Hiroshima(広島)/52/2005(ホモ価640)抗血清に対してHI価320、B/Malaysia/2506/2004(同320)抗血清に対してHI価10、A/New Caledonia/20/99(同320)およびB/Shanghai(上海)/361/2002(同320)各抗血清に対してHI価<10であった。なお、B/Malaysia/2506/2004抗血清に対してはA/Hiroshima(広島)/52/2005とB/Shanghai(上海)/361/2002の各抗原も分離株と同様にHI価10を示した。このことと前述の分離ウイルスの迅速キットの結果から、分離ウイルスのB/Malaysia/2506/2004抗血清に対する反応は非特異的なものであると判断した。さらにRT-PCRによりN2遺伝子を確認し、分離ウイルスはA/H3N2亜型インフルエンザウイルスと判定した。

この第42週のインフルエンザウイルス分離以降、現在(第47週)まで当所でのインフルエンザウイルスの分離は無く、このウイルスが2006/07シーズンの主たる流行ウイルスとなるのかは現時点では不明である。今後、本格的なインフルエンザ流行を迎えるにあたり、慎重なサーベイランスの継続が必要である。

埼玉県衛生研究所ウイルス担当
島田慎一 宇野優香 河橋幸恵 篠原美千代 内田和江 土井りえ 河本恭子 菊池好則

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