インフルエンザウイルスAH1亜型の家族内感染事例−山梨県

(Vol.27 p 337-338:2006年12月号)

山梨県内の小児科定点医療機関で第46週に採取された親子、親族、計4名の咽頭ぬぐい液より2006/07シーズンに初めてインフルエンザウイルスAH1亜型が分離されたので概要を報告する。

2006年11月14日、男児A(4歳)が頭痛、関節痛、発熱(38℃)、その弟B(2歳)が発熱(39℃)など、かぜ様の症状を呈した。15日夕、男児A、Bともに40℃の発熱のため小児科を受診し、迅速診断キットによる抗原検査で両名ともにインフルエンザウイルスA型が陽性となった。同じく15日には男児A、Bの父親(35歳)が発熱、その叔母(32歳)も昼頃から発熱したため16日に小児科を受診、両名ともに抗原検査でインフルエンザウイルスA型が陽性となった。4名は受診後リン酸オセルタミビルを4日間服用し、現在では症状は軽快している。また、昨シーズン、今シーズンともにインフルエンザワクチンは接種していなかった。

男児A、Bは父親と母親との4人家族であるが、母親は発症していない。叔母は11月10〜13日朝まで韓国に旅行し、13日夜には叔母の子供(8歳)とともに男児A、Bの世話をしていた。叔母の子供は12日夜に発熱があり、13日には別の小児科を受診していたが、インフルエンザウイルス抗原検査は実施していない。

当所において15日に採取した男児A、B、16日に採取した父親と叔母の咽頭ぬぐい液について迅速診断キットによる抗原検査を行ったところ、男児Aと叔母の2件がインフルエンザウイルスA型陽性となった。さらに、MDCK細胞、CaCo-2細胞によるウイルス分離を行ったところ、4件いずれも接種4日目にはCaCo-2細胞の培養上清が0.75%モルモット赤血球で16〜32HA価、接種5日目にはMDCK細胞の培養上清が16HA価を示した。

MDCK、CaCo-2細胞の培養上清について国立感染症研究所分与の2006/07シーズン用インフルエンザウイルス同定キットによりHI試験を実施した。その結果、A/New Caledonia/20/99(H1N1)(ホモ価1,280)の抗血清に対してHI価80、A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)(同2,560)、B/Malaysia/2506/2004(同640)、B/Shanghai(上海)/361/2002(同640)の各抗血清に対していずれもHI価<10を示し、インフルエンザウイルスAH1亜型と同定された。

11月19日から男児Aと同じ幼稚園に通う園児数名に発熱(38.5℃以上)などがみられており、うち2名が小児科を受診して抗原検査でインフルエンザウイルスA型が検出されている。この園児2名と男児Aとの交友関係は不明である。現在、当所においてこの園児の咽頭ぬぐい液についてウイルス分離を行っている。

今回の流行は、叔母が韓国でインフルエンザウイルスに感染して拡大したものなのか、叔母の子供がインフルエンザウイルスに感染していて拡大したものなのか、詳細については不明である。しかし、分離された4株は今シーズンのA/H1N1亜型ワクチン株(A/New Caledonia/20/99)の抗血清に対しては低いHI価であるため、今後の本株類似株の動向には注意が必要であろうと思われる。

山梨県衛生公害研究所 山上隆也 原 俊吉
小松小児科医院 小松史俊

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る