今冬初発集団かぜからのB型インフルエンザウイルスの分離−滋賀県
(Vol.28 p 12-13:2007年1月号)

2006年11月、滋賀県内において2006/07シーズン初となる集団かぜ事例からB型インフルエンザウイルスが分離されたので、その概要を報告する。

2006年11月6日、滋賀県内の小学校1クラスで集団かぜが発生し学級閉鎖が実施された。かぜ症状で欠席している12名について所管保健所が調査したところ、12名の発病日は10月31日〜11月6日、主症状は発熱(37.7℃〜40.4℃)で、その他頭痛、下痢、嘔吐などが認められた。このうち協力の得られた11名からうがい液を採取し、当所においてMDCK細胞を用いたインフルエンザウイルスの分離を行ったところ、11件中5件についてMDCK細胞初代培養3日目から細胞変性効果が認められた。それらの培養上清はモルモット赤血球(0.6%)を用いた赤血球凝集(HA)試験でHA価32〜64を示した。そこで、これらの分離株について国立感染症研究所より分与された2006/07シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験を行ったところ、抗B/Malaysia/2506/2004血清(ホモ価320)に対してはHI価320を示したのに対し、抗A/New Caledonia/20/99 (H1N1)血清(同640)、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005 (H3N2)血清(同1,280) および抗B/Shanghai(上海)/361/2002血清(同320)にはいずれもHI価<10であったことから、分離株はVictoria系統のB型ウイルスであることが判った。

滋賀県感染症発生動向調査におけるインフルエンザ定点当たり患者数によると、昨シーズン(2005/06シーズン)におけるインフルエンザ流行の始まりは2005年第50週で、2006年第4週にピークを形成した後減少し、第14週に患者数が1.0人/定点以下となり終息に向かうと思われたが、滋賀県では第17〜18週および第22週に再び1.0人/定点を超え、その後第25週にほぼ終息した。

2005/06シーズンの流行期を終えた後も、当所において2株のB型インフルエンザウイルスが分離されている。1例目は、2006年6月2日(第22週)に集団かぜが発生していた1クラスの1名から分離された株で、もう1例は2006年9月22日(第38週)に県内医療機関を受診したインフルエンザ様疾患患者1名から分離された株であり、これらはいずれもVictoria系統のB型であった。今回の事例は、同系統が昨シーズンから引き続き分離されたものと考えられる。

今回のウイルス分離以降、インフルエンザ患者報告数はわずかに増加が見られるものの、まだ本格的な流行はむかえておらず、当所でもウイルスは分離されていない(第49週現在)。今後のウイルスの動向および流行状況を監視するため、引き続き慎重なサーベイランスが必要である。

滋賀県衛生科学センター
田中千香子 松本文美絵 長谷川嘉子 大内好美
吉田とも江 林 一幸 辻 元宏

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