宮城県内で流行しているノロウイルスの遺伝子型

(Vol.28 p 44-45:2007年2月号)

宮城県における感染性胃腸炎の定点医療機関当たりの患者報告数は、第47週を境に急増し、第50週には33.74人(昨年同期と比較して1.6倍)となった。2006年11月〜12月に県内の保健所に届出のあった感染性胃腸炎の集団発生16事例中すべての事例で、定量PCR法によりgenogroup (G) IIのノロウイルス(NoV)遺伝子が検出された。そこで県内で2006年11月〜12月に発生した感染性胃腸炎事例と、11月に発生したNoVによる食中毒事例、および関西地方で発生した食中毒関連事例で検出されたNoV遺伝子計21件(7クローンを含む)についてG2 SKF/Rのプライマーを用いて塩基配列の決定を行った。

塩基配列が決定された249ntについて、NJ法で系統解析を行った結果を図1に示した。検出されたNoV遺伝子はすべてGII/4(Bristol/1993/UK)近縁株であり、塩基配列のレベルで98.8%、アミノ酸レベルで97.6%の相同性が認められた。これらの株は2003〜2005年の期間中に県内の感染性胃腸炎事例や食中毒事例で検出されたGII/4近縁株とは異なったクラスターを形成した。さらに1995〜1996年にアメリカで流行し、その後ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、オランダ、イギリスで、1997〜2000年にオーストラリアで流行したGII/4の変異株(accession No. AF080549 US95/96)ともクラスターを異にした。また2002年にアメリカとイギリスで流行したGII/4変異株のFarmington Hill (accession No. AY502023)、b4s6(accession No. AY587985)のクラスターにも属さなかった。GII/4変異株による感染性胃腸炎の流行は、2004年にオーストラリアのサウスウエールズでも確認されている(accession No. DQ078794 Hunter‘04)。

今回検出された変異株については、さらなる詳細な分子疫学解析が必要であるとともに、この株による今後の流行には十分な警戒を要する。

参考文献
Rowena A. et al ., J Clin Virol 44:327-333, 2006

宮城県保健環境センター微生物部
植木 洋 庄司美加 佐藤千鶴子 佐藤由紀 沖村容子 齋藤紀行

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