これは、北半球の次季インフルエンザシーズン(2007年11月〜2008年4月)におけるワクチン株についての推奨である。南半球でのワクチンに関しては、2007年9月に示される予定である。
2006年9月〜2007年1月の期間に、インフルエンザの活動性はアフリカ、南北アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアで報告されたが、全体として近年の同時期よりも低かった。南半球では9月にまで軽度の活動性が続き、10月には減少したが、マダガスカルでは10月にA/H3N2亜型の流行が1件報告された。北半球ではインフルエンザの活動性は近年より遅れて11月から始まったが、北アメリカでは12月、ヨーロッパでは1月から増加した。A/H1N1亜型は南アメリカでは散発的であったが、米国では多く、いくつかの流行を生じた。A/H3N2亜型はカナダやヨーロッパで多く、何カ国かで流行を生じた。B型はこの期間中、ほとんどの国で少なかった。
最近の分離株における抗原性の特徴
A/H1N1亜型については、その多くがワクチン株であるA/New Caledonia/20/99と近かったが、抗原的にワクチン株と異なって、A/Fukushima(福島)/141/2006、A/Hong Kong(香港)/2652/2006、A/Solomon Islands/3/2006により近い株の割合が増えていた。
A/H3N2亜型については、その多くがワクチン株であるA/Wisconsin/67/2005 、A/Hiroshima(広島)/52/2005と近かった。最近の分離株では、抗原性や遺伝子的特徴がワクチン株と異なるものの割合が増えつつあったが、抗原解析からは明らかな変異株といえるものの出現は認められなかった。
B型については、B/Victoria/2/87およびB/Yamagata(山形)/16/88系統のウイルスが感染循環しており、前者のほとんどはワクチン株であるB/Malaysia/2506/2004と近かった。
不活化インフルエンザワクチンに関する調査結果
現行のワクチン株を含む3価不活化ワクチンを接種された人の血清を用いて、HI試験により、ヘマグルチニン(HA)に対する抗体(HI抗体)を測定した。A/New Caledonia/20/99(H1N1)については、そのワクチン株に対するHI抗体価40以上の上昇は、小児の59%、成人の68%、高齢者の53%でみられた。しかし、最近の分離株を用いて調べると、小児で26%、成人で52%、高齢者で39%とやや低かった。さらに、接種後の幾何平均HI抗体価に関しては、ワクチン株と比べてA/Solomon Islands/3/2006類似株に対しては、47%の低下がみられた。
A/Wisconsin/67/2005(H3N2)については、そのワクチン株に対するHI抗体価40以上の上昇は、小児の62%、成人の83%、高齢者の88%にみられた。しかし、最近の分離株を用いて調べると、小児で34%、成人で58%、高齢者で54%とやや低かった。成人と高齢者において、接種後の幾何平均HI抗体価をみると、ワクチン株と比べて最近の分離株に対しては低下がみられた。
B/Malaysia/2506/2004については、そのワクチン株に対するHI抗体価40以上の上昇は、小児で32%、成人で74%、高齢者で73%にみられた。成人と高齢者において、最近のB/Malaysia/2506/2004類似分離株を用いて、接種後の幾何平均HI抗体価およびHI抗体価が40以上を示した者の割合をみると、それらの分離株の間では違いがなかった。
2007/08インフルエンザシーズン(北半球の冬)に推奨されるワクチン株
A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)類似株
A/Wisconsin/67/2005(H3N2)類似株*
B/Malaysia/2506/2004類似株
* A/Wisconsin/67/2005(H3N2)およびA/Hiroshima(広島)/52/2005
(WHO, WER, 82, No.9, 69-74, 2007)