牧場での「ふれあい体験」が感染源と示唆される腸管出血性大腸菌O157感染事例−青森県

(Vol.28 p 116-118:2007年4月号)

2006年7月、青森県内の下北地域県民局地域健康福祉部保健総室(むつ保健所)管内で、牧場での「ふれあい体験(ウシの搾乳および給餌等)」が感染源と示唆される腸管出血性大腸菌(EHEC) O157:H7 (VT1&2)による感染事例が発生したのでその概要を報告する。

7月3日、医療機関からむつ保健所あてにEHEC O157による患者の発生届が提出された。患者はA小学校の社会科見学実習で6月16日(金)に管内の牧場において、「ふれあい体験」に参加していた。

その後、7月7日(金)〜7月31日(月)にかけて患者発生の届出が続発した。保健所の調査の結果、いずれの患者も患者自身もしくは患者の家族が上記牧場において同様に「ふれあい体験」に参加していたことが判明した。「ふれあい体験」の内訳は、6月16日(金)A小学校、7月1日(土)催事、7月6日(木)B小学校、7月11日(火)C小学校であった。

発生状況を表1に、症状等を表2に示した(なお、死亡者はなし)。

疫学的調査の結果では、患者に共通する要因が患者自身、もしくは患者の家族が「ふれあい体験」で当該牧場を訪れていたことに限られることが判明した。さらに、患者から分離した菌株のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)による遺伝子解析(図1図2)の結果では、制限酵素Xba IおよびBln Iによる切断パターンはXba Iで1株(レーン15)、Bln Iで2株(レーン6、15)を除いて、すべて同一であったことから、感染源は当該牧場であると示唆された。

当該牧場では当面の間、ふれあい体験を自粛し、感染症対策を講じることとなり、衛生部局と畜産部局が指導を実施した。患者発生の期間中に、厚生労働省から2006(平成18)年7月4日付、健感発第0704002号により「動物展示施設(動物とのふれあい施設を含む。)における動物由来感染症対策について」通知があり、県担当課より早速に市町村等の関係機関への周知が行われた。

動物等取扱業者への動物由来感染症対策についての周知徹底は当然のことであるが、利用者への動物由来感染症についての注意の喚起、さらには、一般住民への動物由来感染症についての広報、啓発に努めることも重要であると思われた。

青森県環境保健センター微生物部
和栗 敦 桜庭 恵 澤田 譲 阿部幸一
下北地域県民局地域健康福祉部保健総室(むつ保健所)
工藤美子 齋藤和子
青森県健康福祉部保健衛生課
田中 純 大西基喜

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