麻疹含有ワクチン(MCV)が導入される以前は、韓国は麻疹の流行国であった。2000年1月〜2001年7月の間に、55,000症例以上(人口10万対118症例)の麻疹症例と7例の死亡例が記録されている。この集団発生における麻疹症例の年齢分布は、2歳未満と7歳〜15歳までの学童期の2峰性になっており、2歳未満については、その86%がワクチン未接種者であったが、その一方で7歳〜15歳については、80%がワクチン1回接種者であった。
2001年初めに韓国政府は、麻疹排除(elimination)のための5カ年計画を策定した。この計画の到達目標として、以下の1)〜3)が計画された。
1)学校入学前に麻疹混合ワクチン2回接種(MCV2)を義務化
2001年初めには、学校入学前に麻疹混合ワクチン2回接種(MCV2)の義務化が策定された。教育・人的資源省と協力のもと、MCV2を受けたという証明書がない小児については学校入学前に民間の診療所、もしくは保健所で予防接種が行われた。2001年秋の入学時期には、ほぼ99%の入学児童がMCV2を接種された。2002〜2005年にWHOに報告されたMCV2の接種率は95〜99.9%であった。
2)幅広い年齢の小児に対しての追加接種キャンペーン
2000〜2001年の麻疹流行の疫学データおよび2000年に行われた血清抗体保有率調査から、7〜18歳の年齢層では5.3〜15.3%が麻疹への免疫力を保有していないことが明らかになった。この結果に基づき、2001年5月21日〜7月14日までの間、麻疹・風疹ワクチンを用いた接種キャンペーンが全国で行われた。このキャンペーンは8歳〜16歳までのMCVの2回接種を受けていない小児を対象に行われた。
追加接種活動キャンペーンの結果、対象とした年齢群580万人の小児の95%がMCV2を受けることとなった。また、16のすべての州で接種率が向上した。
3)麻疹疑い症例の検査室診断による全数サーベイランスの構築
麻疹サーベイランスの感度を向上させるために、2001年7月以降、韓国CDCの疫学専門家が麻疹の疑い症例について調査を行い、それらの症例から臨床検体を収集した。
疑い症例を血清学的、ウイルス学的に確定診断するために、また、検体の分子的な診断と遺伝子型を決定するために、公的検査機関と民間検査機関の間でのネットワークが、すべての国家レベルおよび州レベルで構築された。
その結果、麻疹サーベイランスの質が向上し、疑い症例の85%は報告後48時間以内に調査が行われた。適切な血清学的検体が疑い症例の93%から採取され、集められた検体の100%の検査結果が7日以内に得られた。また、ウイルス株は、確認された麻疹感染伝播集団の100%から分離された。
疑い症例および確定症例の報告数は、2002年にはそれぞれ143例、11例(人口100万対0.23)、2003年にはそれぞれ58例、13例(人口100万対0.27)、2004年にはそれぞれ71例、6例(人口100万対0.12)、2005年にはそれぞれ63例、6例(人口100万対0.12)、2006年にはそれぞれ126例、25例(人口100万対0.52)という結果であった。この5カ年計画の結果、MCVの2回接種率を向上させることに成功し、95%以上の高い接種率を維持することにつながり、2006年11月7日に開催された専門家会議にて麻疹の排除が確認された。
(WHO, WER, 82, No.14, 118-124, 2007)